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リンツ伝  作者: レベル低下中
第六章 辺境伯後編
1628/1781

ジョルジュ画伯への依頼

 さて、ベルトホルト殿下の第一皇子、ゲルト殿下のお披露目も終わり、いつもならロスリーに帰る時期がやって来た。


 それだけではない。最初はフローレンスを三ヶ月間拉致する腹づもりだったが、さすがにフローレンス的にもマズいだろうと思い直して、時々教会に戻すことにした。

 そんな一日・・・


「何だ、それで私に絵を描けって?」

「うん。昔、セバスを真ん中に据えて、みんなを描いたことがあったでしょ。」

「ああ、あれは大変だった。50人は超えてただろ。普通はあんな絵は描かないよ。とんでもない大きさだったし、その上、細かい表情は困難極まりなかったし。」


「二枚一組とかで、できない?」

「まあ、エルの頼みなら何とかしないとな。でも、全員は揃ってないだろ?」

「本当に全員揃うのは多分無理だよ。それに、機会を失うともうできないかも知れない。」

「そうだな。分かったよ。」


 ということで、帝都邸にいた全員を公爵邸に集め、キース君夫妻と次期会長のアレクシス君、ラウル商会に嫁いでるクラウディアさん、グラーフ・ロスリー帝都店のザームエルさんまで呼んだ。


 まず、全員が並んだ構図でラフスケッチを描いた後で、個人の顔を描いた。

 こうでもしないと、描き手が全員の顔を記憶するなんてとてもできないのだ。



「それにしても凄いわね。さすがはエル君。よくこんな事思い付くわねえ。」

「20年前も凄かったですけど、今回も凄い人数です。」

「ああ、老骨に鞭打って頑張るさ。」


「20年前って、ミネルヴァの婚礼でロスリーに立ち寄った時か。」

「そうですよ。まだお祖父様がご存命の時でした。」

「えーっ!私の知らないとこで、こんなことしてたの?エルハバード様、お姉様、酷いです・・・」

「確か婿殿のとこの執事長を囲んだんだよな。」


「そうよ、我が公爵家も、こういう伝統を作りましょう。」

「そうだなあ。エルヴィーラも呼んで。」

「我がエル=ラーンでもこういうのは必要だな。」


「はいはい、アルフレート様、もう少し中へ寄って下さい。」

「メリッサお母様、もっとギューッとして下さい。」

「お父様、前回私は描かれているのですか?」

「もちろんだ。アーニャさんが抱っこしてたからな。私はフローレンスを抱っこしてた。」

「まあ、そうだったのですね。」


「機会があれば、今でもセバスの家に飾ってあるから、見るといいよ。ジョルジュ叔父さん上手いから、ちゃんと誰だか分かるんだ。」

「よし、出来たぞ。後は一人づつ顔の特徴を描かせてもらうね。」


 小さな子供もいるからワイワイガヤガヤだが、この騒がしい雰囲気が楽しいし、こんなことにアマ-リア殿下やアルベール陛下まで付き合ってくれるのが嬉しい。


 いい絵が完成するといいな・・・



         第六部  完


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