ジョルジュ画伯への依頼
さて、ベルトホルト殿下の第一皇子、ゲルト殿下のお披露目も終わり、いつもならロスリーに帰る時期がやって来た。
それだけではない。最初はフローレンスを三ヶ月間拉致する腹づもりだったが、さすがにフローレンス的にもマズいだろうと思い直して、時々教会に戻すことにした。
そんな一日・・・
「何だ、それで私に絵を描けって?」
「うん。昔、セバスを真ん中に据えて、みんなを描いたことがあったでしょ。」
「ああ、あれは大変だった。50人は超えてただろ。普通はあんな絵は描かないよ。とんでもない大きさだったし、その上、細かい表情は困難極まりなかったし。」
「二枚一組とかで、できない?」
「まあ、エルの頼みなら何とかしないとな。でも、全員は揃ってないだろ?」
「本当に全員揃うのは多分無理だよ。それに、機会を失うともうできないかも知れない。」
「そうだな。分かったよ。」
ということで、帝都邸にいた全員を公爵邸に集め、キース君夫妻と次期会長のアレクシス君、ラウル商会に嫁いでるクラウディアさん、グラーフ・ロスリー帝都店のザームエルさんまで呼んだ。
まず、全員が並んだ構図でラフスケッチを描いた後で、個人の顔を描いた。
こうでもしないと、描き手が全員の顔を記憶するなんてとてもできないのだ。
「それにしても凄いわね。さすがはエル君。よくこんな事思い付くわねえ。」
「20年前も凄かったですけど、今回も凄い人数です。」
「ああ、老骨に鞭打って頑張るさ。」
「20年前って、ミネルヴァの婚礼でロスリーに立ち寄った時か。」
「そうですよ。まだお祖父様がご存命の時でした。」
「えーっ!私の知らないとこで、こんなことしてたの?エルハバード様、お姉様、酷いです・・・」
「確か婿殿のとこの執事長を囲んだんだよな。」
「そうよ、我が公爵家も、こういう伝統を作りましょう。」
「そうだなあ。エルヴィーラも呼んで。」
「我がエル=ラーンでもこういうのは必要だな。」
「はいはい、アルフレート様、もう少し中へ寄って下さい。」
「メリッサお母様、もっとギューッとして下さい。」
「お父様、前回私は描かれているのですか?」
「もちろんだ。アーニャさんが抱っこしてたからな。私はフローレンスを抱っこしてた。」
「まあ、そうだったのですね。」
「機会があれば、今でもセバスの家に飾ってあるから、見るといいよ。ジョルジュ叔父さん上手いから、ちゃんと誰だか分かるんだ。」
「よし、出来たぞ。後は一人づつ顔の特徴を描かせてもらうね。」
小さな子供もいるからワイワイガヤガヤだが、この騒がしい雰囲気が楽しいし、こんなことにアマ-リア殿下やアルベール陛下まで付き合ってくれるのが嬉しい。
いい絵が完成するといいな・・・
第六部 完




