もちろん、こちらも大事な日
今日はアーニャさんの誕生日。だから外にお出掛けだ。
この日ばかりは陛下達も譲ってくれるのだ。
まあ、陛下たちも明日を控えて、今は非常に忙しい時期なのだが。
「今日はとてもご機嫌アーニャさんだよね。」
「はい。帝都に来てから、なかなか旦那様と落ち着いた時間を過ごせませんでしたから。」
「そうだねえ。仕事がない代わりに、千客万来って感じ?」
「また旦那様が東方の言葉を使っております。」
「すっかり覚えたよね。」
「はい。旦那様の使う言葉は、全て理解しないといけませんから。」
「その語学力は本当に驚愕するよ。私だってトウワの本の原典なんて読めないのに・・・」
トウワ語は日本語に似ているような気はするが、微妙に文字が違うし、ミミズが這ったような字だし、古語だろうし・・・
ヒョウエさんに習おうとしたが潔く諦めた。
「またお褒めいただきました。帝都に来てから嬉しい事ばかりです。」
「フローレンスのこととか?」
「はい。それもありますし、先日の、我が妻に狼藉を働いた者は、いかなる者も死を与えてやる、というのは痺れてしまいました。」
うん?何となくそうだったような、そうでなかったような・・・
「まあ、そうだよ。その意味で間違いない。」
「あれ以来、ずっとご機嫌アーニャさんなのです。」
「姉さん!何失礼な事いってるんですか!」
うん?すごく聞き慣れた声と会話が・・・
「だって~、ここの料理、美味しくないんですもの。」
「何だ、やっぱりアイリーンさんとウルさんか。こんな所でどうしたの?」
「姉さんが、ここの料理が不味いって、余りに恥ずかしかったもので。」
「あ~そうだね~、帝都ではなかなかロスリーのようにはいかないよ。良い店紹介するから、とにかくお会計してきたら。」
ということで4人になる。
「ここならロスリーに負けないよ。」
「あっ、ここ、ジョセフ様のお店ですね。」
「そうだよ。そんなにお高くないから、外で食事するならここにしなよ。」
「はい、旦那様、ありがとうございます。ジ~・・・」
「分かった、分かったよ。甘い物奢ればいいんだね。」
「さすがは旦那様、長い付き合いだけのことはありますね。」
「この姉の存在は、ウル一生の恥です。」
結局、3皿平らげたアイリーンさんは、満足げに帰って行った。
「思わぬ邪魔が入ってしまってゴメンね。」
「いいえ。とても楽しかったですよ。思い出に残るいい誕生日でした。」
「さあ、帰ったらお義兄様主宰の誕生パーティーだね。」
「その後も、よろしくお願いしますね・・・」
「もちろんだとも。式典をサボるつもりで頑張るよ。」
二人で笑い、駆けながら屋敷に帰る。
学生の頃のように・・・




