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リンツ伝  作者: レベル低下中
第六章 辺境伯後編
1618/1781

誕生日は、もちろんあの店へ

 今日はローサの誕生日。

 今年はフローレンスとヴィレもいる特別な日になるだろう。

 もちろん、あの店を訪れる。


「お母様、まだ涙を流されるには早すぎますよ。」

「ごめんなさい。本当に、本当に待ち望んだ日が来たのです。もう、平静を保ってなどいられないのです。」

「さて、ヴィレは初めてかい?」

「ここは評判の店でしたので、学生時代にフローレンスたちと来たことはありますよ。」

「そうだったのか。じゃあ、注文しようか。」

 それぞれが注文した飲み物と軽食が運ばれてくる。


「では、いただきましょう。」

「こういったものを食べるは久しぶりなんじゃない。」

「はい。ここに来るのも12年ぶりですし、普段は質素倹約を心掛けております。」

「だよなあ。昔のドレスがむしろ大きいなんて、どんな食生活してるんだ?」

「でも、清貧こそが私の目指す救済に欠かせないものですので。」


「私とローサは、毎年この日にここに来てたよ。」

「嬉しいです。忘れられていなかったんだなあと。」

「忘れるどころか、日々募る一方だったよ。」

「そうですね。毎年指折り数えておりました。あと何年って・・・」

「今日のお菓子はちょっとしょっぱいですね。特別な味がします。」


「さあさあ、今日の主役へのプレゼントを渡そう。誰から渡す?」

「もちろん、三人です。」

「じゃあヴィレ、あれ出して。」

「はい。」

「じゃあ、せーのっ、お誕生日おめでとうございますっ!」


 ローサにプレゼントを渡す。

 昨日三人で選んだスカーフだ。

 もう泣き崩れて言葉にはならないが、私たちにはそれで十分だ。


「もう、このような日が来ないかも知れないと思った日もありましたが、今日は本当に、本当に、私が考えられる最良の時間を超えております・・・」


 その後、屋敷に帰って私がロスリーで準備したプレゼントで更にぐしゃぐしゃになり、オルガさんとヴィレ、カタリーナさんたちのプレゼントで、そして、みんなとの食事で最高潮に達した。

 ローサ、耐えられたかなあ・・・


 さて、公爵邸に帰る道すがら・・・


「今日はお疲れ様。」

「いいえ、本当にありがとうございました。今までの最高をさらに超えました。もう、息をするのも大変なくらい、矢継ぎ早に嬉しいがやって来ました。」

「みんなで作戦を考えた甲斐があったよ。」


「いつの間にそのような事をお考えになったのですか?」

「主にヴィレやアデーレさんたちだよ。私たちがフローレンスと感動してた裏でね。」

「まあ、ヴィレまで意地悪になってしまいました。」

「いやあ、僕だって父上に唆されたようなもんなんだけどね。なあ、アデ-レ。」

「こんなに楽しいのは久しぶりでした。」


「普段あまり目立たないのに、こういうときは大活躍するんだよなあ。それに、アデ-レさんは元本職だからイベント慣れしてるよね。」

「でも、父上ほど妻を泣かせる方も少ないかと思います。」

「ヴィレ、知らない人が聞いたら凄い会話なんだからな。」

「本当に、幸せ一杯です。ありがとうございました。」


 今年もみんなのお陰で大成功だった。

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