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リンツ伝  作者: レベル低下中
第六章 辺境伯後編
1611/1781

10年の時を埋めようとする

 さて、教会内の立派な部屋を一つ強・・・いや、お借りした。


「本当にご無沙汰して、文すら書かず、申し訳ございません。どういう気持ちで書けば良いのかすら分からず。今でもこんなに歓迎してくださるのであれば、勇気を出して書くべきでした。」

「いいんだ。それは私たちだって同じだ。フローレンスの決意を揺さぶってはいけないと思って、書くことができなかった。」

「お互い、水くさいよな。」

「手紙を書かなかったお前が言うな。」

「まあベル君、そうだったの?」

「いやあ、筆無精で、申し訳ない。」


「10年でいろいろあったよ。エラさんもマリアさんも亡くなったよ。」

「そう、なのですね・・・」

「パルも、去年の秋に亡くなった。会わせてやりたかったよ。」

 彼女の目から再び涙が零れる。


「これから毎日、皆さんのご冥福を祈ります。」

「でも、悲しいのはこの三つだけだ。ゲルや団長、ジョセフだってしぶとく元気にしてる。」

「よかった。それは何よりです。」


「フローレンスが特に可愛がってたエルヴィーラさんはサントスのレアンドロ殿下に嫁いで、もうすぐ二人目が生まれるそうだよ。」

「本当ですか。彼女のことは、いつも気に掛けておりました。」

「それに加えて、シュテファンとリリーさん。ユルゲンとヨゼフィーネさんも一緒になって、みんなうちで働いてる。とにかく屋敷は子供だらけで大変なんだ。」

「まあ、リリーさん、妹さんがたくさんおりましたよね。」

「去年、一番下の子が結婚して、ロスリーに住んでるよ。」


「皆さん、前に進んでいたのですね。私は修行ばかりで、ご報告できるようなことがございません。それに、いつも思うのは過去のことばかり。とても恥ずかしいです。」

「そんなことは無いさ。とても立派になったように見えるし、誰よりも自分を磨いたのはフローレンスだ。」

「そうですよ。その歳で司教になるなんて、並大抵のことではございません。」

「へっ?女性でも司教になれるの?」

 いやいや、みんなそんな顔しないでよ。にしてもすげぇな、神聖教・・・


「そう言えば、ロスリーは男性ばかりだったですね。」

「司教なら別にロスリーに赴任したっていいんじゃない?」

「お父様、まだ帝都に来たばかりですの。」

「連れて帰ろうかな・・・」

「お父様、話を聞いていただけると・・・」

「フローレンス、今日のところは諦めなさい。今度は屋敷の皆を連れてまいります。」

「楽しみです。ありがとうございます。奥方様。」


 とにかく本当に良かった。

 月並みだが、この言葉しか出て来ない。


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