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リンツ伝  作者: レベル低下中
第六章 辺境伯後編
1607/1781

シスターの審判

「では、あなたの胸中を余さず吐露していただきました。その上で、神に許しを乞うため、祈りを捧げましょう。私も共に祈ります。」

「ありがとうございます。」


 神に許しを乞う祈りを行います。

 よほど敬虔な方なのでしょう、その文言も一言一句正確なものです。

 ここまでできる方は、一般信徒ではそうそういるものではありません。


 祈りが終わり、私はまた、元の位置に戻り、神の言葉をお伝えします。


「では、祈りは確かに神に届きました。そして、その言葉は確かにお聞き届けいただきました。懺悔を求め、告白したる者よ、あなたは既に許されております。ご安心下さい。」

「あの、私が許されたということでしょうか。」

「お話は伺いました。あなたの周囲には、あなたを大切に思う方々がおり、社会の一員として真っ当に生計を立て、ささやかな幸せを手にしております。それは罪人ではあり得ないことです。あなたは、ずっと以前に許された身なのです。」


「あ、ありがとうございます。でも、私を許していない者もおります。」

「それは、これからも誠心誠意、謝罪し、あなたの善性を証明し続けなくてはなりません。それは人の世を生きる以上、最後までついて回りますが、それと神、そしてあなたが将来至るであろう次の世界とは別です。」


「シスター、ありがとうございます。しかし、許されない事をした事実は消えません。」

「ええ、事実は消えません。しかし、恋は皆するものです。そして、人は時として、進むべき方向を過つものです。ですから、時に自省し、時に懺悔し、他者の幸せを壊すことの無いよう、注意を払い続けなければなりません。かく言う私も未熟者ですので、毎日、反省と懺悔の日々ですよ。」

「シスターでも、そのような事がおありなのですね。最後に一つだけよろしいでしょうか。」

「はい、何なりと。」


「亡くなられた方や、許嫁の女性には対しては、どのようにすれば良いのでしょうか。」

「亡くなられた方に対しては、墓参をするのが良いのでしょうが、どこの誰とも分からぬ者にそれはできません。ですので、たまにはここに来て、冥福を祈って下さい。そして、許嫁の方は、あなたを恨んでおりませんので、ご安心下さい。」

「えっ?それは何故・・・」


「その方は東の辺境ではありますが、大変幸せに暮らしております。その方があなたに対して何か恨み言を言っている所など、私は聞いたことがございません。このことは、アナスタシア様にこの名を授けていただいた私、シスター・フローレンスが、神の下に真実であることをお誓いいたします。」

「おお!神はおられました・・・」

 思わず、彼女は泣き崩れる。


「少しは肩の荷が下りましたか。」

「本当に・・・来て、良かった・・・」


 彼女の肩を支え、既に夜の帳が降り始めた礼拝堂を後にします。

 本当に、印象深い出来事でした。


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