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リンツ伝  作者: レベル低下中
第六章 辺境伯後編
1602/1781

パウロのライフワーク

 さて、年度末の一日。

 パウロが政庁にやってきた。


「おはようございます。旦那様。」

「ああおはよう、パウロ。どうだい?久しぶりの政庁は。」

「そうですね。ガーゴイルに行ってからここに来ることはありませんでしたからねえ。」


「さすがに、もう知っている人はいないかな?」

「農務責任者が私の4つ下で、最後の同僚ですね。」


「そうか。パウロは政庁で働いていた期間は短かったからねえ。」

「それでも8年足らず勤務いたしました。」

「それで、ついに完成したんだね。」


「はい。長らくお待たせしましたが、リンツ家史が取りあえずの完成を見ましたので、お持ちした次第です。」

「随分長いこと苦労を掛けたね。始めたのっていつだったっけ?」

「旦那様がサントスからお帰りになった後くらいですね。」

「20年以上前か。エラさんやセバスが生きてた頃だもんね。」


「旦那様が爵位を譲られると聞き、良い区切りと考え、こうして体裁を整えたものです。」

「そうだね。今後の方針はフランシスが立てるべきだ。」

「何とか最後まで完遂できてほっとしております。」

「やっぱり、パウロに任せて良かった。」

「いろいろ大変なことはございましたが、とても楽しかったです。」


「いろんな人に話を聞いてたからね。」

「はい。古老がいると聞けばオーガブルクやトレドまで行き、追加でフェネトの歴史を調べるためエルリッヒ家に行ったりと、本当に幅広い記述ができたと思います。」

「家史までどこにも負けない立派な家になっちゃったな。」

「恐れ入ります。」


「でも、うちの歴史は続くから、追補も是非お願いするよ。」

「よろしいのですか?」

「もちろんだ。これはパウロにしか頼めない。」

「ありがたいことです。私のライフワークになりますね。」

「そう言っていただけると私も嬉しいよ。これからもよろしくね。」

「はい。お任せ下さい。」


「後は、私の次にアーニャさんとの時間が長かったパウロには、アーニャさん語録もまとめてもらわないといけないなあ。」

「あの~、何だか雲行きが変わって来たような・・・」

「何を言う。これを結婚30周年に発表してアーニャさんを昏倒させるまでがミッションだ。」

「またそんな役回りですか?」

「何を嫌がってるんだ。とっても重要で美味しい役回りじゃないか。」

「今度こそ不敬罪でエネル家が終わってしまいますよ。」

「大丈夫だパウロ。エネル家の歴史もまだまだ続く。」

「いや、商会の方は大丈夫でしょうけど、私の家の方ですよ。」

「ユルゲンは無事だろうから安心しろ。」

「そんなあ・・・」


 まあ、何とかパウロをねじ伏せた。

 本当に楽しみだなあ・・・


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