ここだけ医学が進歩する
さて、ここは市民病院内の研究所である。
「麻酔の実験は進んでる?」
「ええ、ジエチルエーテルについては、おおよその使用量を把握できました。しかし、痛みを感じなくなる薬品なんて・・・凄すぎますね。」
「そして今後、実験に加えて欲しいのがこの二つ、モルヒネとアスピリンだ。」
「これも痛みを抑える薬ですか。」
「そう、今までのが手術を行うために、その痛みを抑える目的のもの。そしてこの2つは病気による痛みを抑えるためのものと考えて欲しい。」
「分かりました。これからマウスを使って検証していきます。」
「こちらのモルヒネは非常時用と心得て下さい。中毒性がありますから。そしてアスピリンは持病を持っている人への使用は控えて下さい。ショックを起こす危険性があります。」
「分かりました。注意しておきます。」
「ワクチンと血清の方はどうですか?」
「ええ、不活性ワクチンはともかく、弱毒性というのが、やはり、恐怖心もあって。血清の方はヘビ毒のものは、あれで出来ていると思います。」
「まあ、そんなに強い毒を持つヘビは国内にいないけどね。」
「ええ、でも子供にとっては、それでも脅威ですので。」
「そうだね、引き続きよろしくお願いします。」
「しかし、モルヒネなどは麻酔薬に分類されるのでしょうか?」
「そうだね、鎮痛薬とでも分類しようか。」
「これらは、どうやって作るのですか?」
「モルヒネはケシの実から成分をアルコールや水酸化ナトリウムを使って抽出する。アスピリンはフェノールと水酸化ナトリウムを反応させて高温高圧下で二酸化炭素と反応させる。それに硫酸や酢酸を加えてアセチルサリチル酸を抽出する。」
「これらは、論文としてまとめるのですか?」
「お願いできますか?」
「いやぁ、我々が開発したものではありませんので。」
「でも辺境の子供が作りました、とかいっても誰も信じないよ。まあ、実際に製造しているのは化学工廠だけど。」
「あとは、宗教的に異端とされる恐れもあります。」
「そうねえ、あそこはどうしようもないねえ。でも、知見をまとめて他の医師や後進に受け継がれるようにしておく必要はあるね。」
「あくまで医学的治療法の文献としてですね。」
「そうです。まあ、いつかは分かってもらえますよ。その時は、クリスティアン先生とローマン先生の共同研究成果として発表していただきます。」
「ええ~」
「だから、他の研究者に聞かれても答えられるようにしててね。」
「それが難しいのですが・・・」
まあ、マジカルブレインが通用するのはセバスだけだもんね。
それにしてもみんな、欲がないよね。




