まだまだ質問タイムは続く
今日も今日とて、セバスと二人で各種政策の情報共有とブラッシュアップを行っている。
「坊ちゃま、この重点育成産業指定とは、どのようなものでしょうか?」
「職人の育成や、工場設備への補助を重点的に行う業種を指定することだよ。具体的にはガラス工芸、金属精錬、金属加工を考えている。まあ、ガラス職人や鍛冶職人は、市内にもいるしね。」
「それは、今の時点で優先度が高いということですか?」
「さすがですね、セバス。これから様々な新製品を世に送り出すために原料となる薬品を製造する必要があります。ガラスと金属は製造設備や試験器具に欠かせないので、まずはここから着手したいと考えています。」
「なるほど、では、この技能検定と顕彰制度もそれに関連したものですね。」
「もちろんそうです。その他に調理、測量、木工、騎士、縫製など、将来的には教育や医療の分野まで広げて技能を競わせ、優秀な者は賞金と表彰、さらにマイスターの称号を使うことを許可するとか・・・メリットを示せば職人の技術向上に役立つと思う。」
「具体的には、どの水準まで引き上げたいのですか?」
「ガラスについては、細い中空の管や綺麗に研磨された中央が球状に膨らんだ物を作成させたい。金属加工についても、仕様と概念図を示すので、それが製作できる技術水準が欲しい。」
「それと、この森林計画ですが、これは一体・・・」
「比較的低標高でアクセスが容易、かつ山崩れの恐れの低い山を対象に、人が木を植え、あたかも畑のように樹木を育てるための計画さ。」
「初めて聞きましたが、そのようなことが可能なのでしょうか?」
「野放図にやっても上手くいかないし、材木の生産性を高めるためのものなので採算が合わないと意味が無い。そのための対象地、植林対象種の選定が鍵になる。後はやり過ぎてもいけない。人工林の造成は森林面積のおおむね20%以下、いや、緩斜面の山を選ぶとなると自ずとそれ以下の面積に止まると思う。」
無理な人工林化が、日本の林業政策の失敗の一つであることは言うまでも無い。
それにどこを見ても杉、という状態が生態系保全の観点から見て、バランスを欠いた状態であることは、自然保護絶対支持派ではない私でも感じることだ。
「樹木の種類に心当たりは?」
「建築、造船資材としては針葉樹、できれば成長の早い種類がいい。これは幹が真っ直ぐ伸び、材質が柔らかくて比較的加工しやすい材質のためだ。広葉樹は紙の原料にしたい。」
「紙?樹木から紙ですか・・・」
「パピルスに似たようなものだと考えて欲しい。とにかく、山を、弱みを強みに変えないとうちは立ちゆかない。いずれにせよ、木材生産が軌道に乗れば、それも当家の大きな柱の一つになる。」
「慧眼、恐れ入ります。」
まあ、私の慧眼ではないけど、遠慮無く使わせてもらう・・・




