早くも船の設計に入る
まだ、外洋試験航海を終えてないのに、早くも新型貿易船の設計に着手した模様。
この時代の人、いや、商売人の思い切りの良さと無茶ぶりには付いていけない。
今日はエネル商会が出資している民間のスーディル造船所に来ている。
まあ、造船所とはいっても、建造作業は全て屋外なので、施設というほどのものではないが。
そう、大型船建造を屋内でできるほどの建築技術は存在しないのである。
「いやあ、副会長、動きが早いですね。」
「ええ、最初にあれを見たときは驚きましたが、実際に動いているのを見て決めました。」
「でも、耐久性なんかは不明な点が多いですよ。全速航行すらまだですし。」
「ええ、でも工夫すべき点は色々分かりましたよ。まず、動力部分を交換しやすいような上部構造にする、外輪の軸と船体の接地部分はかなり補強しないといけませんし、エンジンも2基設置するなら横では無く縦の方が動力伝達が安定すると予測できました。まあ、復元力は落ちるかもですが。そうなると石炭はこのような保管配置が良いですし・・・ご領主さま?」
「いやあ、凄いなと思って・・・」
「いやいや、こんな突飛なことを思いつくご領主様に比べれば、私なんか・・・」
「でも、本音をいうと、あまりに船の概念とかけ離れていて、受け入れてもらえるか不安でした。」
「私も、最初に見たときには理解が追いつかず困惑しました。しかし、水を搔いて進むのはオールでも水車でも同じことですし、あくまで帆走が主体ですからね。漕ぎ手がいない分、船乗りを減らせますので、動力設置で失った貨物室分も確保できました。何よりこれはロマンですよ。」
「それと蒸気機関設置による重心安定は効果ありそうですか。」
「実感するほどの状況下で試験を行う必要はありますが、可能な限り、船体下部に設置し、竜骨に固定するように設計しておりますので、恐らく貢献はしているでしょう。」
「設計について、進捗はどうですか?」
「一度、実験船の設計をしたおかげで、比較的スムーズに完了すると思います。」
「軍艦の設計もお願いしたいんですけど。」
「そうでしたね。軍艦は初めてですが、お任せ下さい。それで、どのような船をお考えで?」
「かなり大型、と言っても新型貿易船よりは一回り小さいカラベルを考えている。全長は60mくらい、排水量は200tまでかな。マストは3本でエンジンは2基、船尾楼は軍艦としての威厳を持たせたいので、従来船よりは若干大きく。そして両舷に大砲用の開閉窓を備えたものにしたい。」
「幅はどうします。」
「貨物船ではないので、速度の方を重視したい。ただし、大砲が船体にかなり強い衝撃を与えるはずなので、従来船より強度を持たせたい。そのために幅が必要であれば、広げて構わない。まあ後日、仕様と概念図は持ってきますよ。」
「これはまた、革新的な船が出来上がりますな。」
「ええ、これを複数持ちたいと思っております。それと船員の育成も、エネル商会に委託したいと考えています。」
「毎度あり、ですな。」




