ついに収入の目処が立つ
帝国歴244年12月
年末を迎えたある日。
「坊ちゃま、帝都に向かわせていた者が戻りました。特許の申請は受理され、年明けから公示され、それにより効力が発生するとのことです。」
「予想より随分早かったね。」
「はい、元々申請は少ないそうで、スムーズに進んだと聞いております。」
ロスリー商会の者を使いに出したが、有能な人物だったようだ。
「それと早かったと言えば、早速帝都から送金差し止めに関する苦情が・・・」
「分かってるね。」
「はい。それと領内各地から石が届きましたので、1階広間に並べております。」
「早速見てみよう。」
生まれてこのかた屋敷からほとんど出たことがない私にとって、鉱物の分布状況など知る由も無い。
しかし、領内の石灰石は、この地がかつて海の底であった証拠だし、北のエル=ラーン山脈は明らかに造山運動の賜である。
しかも、ガラスの材料である石英も豊富なことから火成岩が多いことは十分に予想できる。
見てみると花崗岩が複数あった。
これは領内に広く分布している証拠である。
石灰石も領地西部のサッツから出てきたのは新発見である。
そして・・・これは?
「坊ちゃま、気になる物でもございましたかな。」
「多分、これは無煙炭だと思う。もしそうなら大発見だよ。」
「むえんたん、ですか・・・」
「まあ、見たほうが早いと思う。」
早速、砕いて細かくした物を屋敷裏手に持って行き、たいまつで火をつけてみる。
あれ?こんなに付きにくかったっけ?
しばらく苦戦した後、無事着火した。
火力の強さに使用人大騒ぎ、何かごめん。
「ところでこれ、ゴホーク村からだったよね。すぐに騎士団長に連絡して正確な場所とおおよその量、後は露天掘りでいいか、坑道が必要か調べさせてくれる?できたら最初の数年は採掘権を借りたいし、道を整備する必要があるなら・・・ああ、興奮する!」
「とにかくゴホーク殿を呼んで参ります。」
ちなみに、このゴホーク村を有しているのが騎士団長を勤めるゴホーク家である。
この後、興奮した私が脳筋おっちゃんに説明するのが大変だったが、何とか理解してもらえたようだ。
なお、収益については当面、伯爵家のものとし、ゴホーク家には将来、出世払いとすることで快く了承してもらえた。
石炭があれば製鉄も、蒸気機関や発電も可能なのでは、と夢は膨らむ。
しかし、探せばいろんな物が出てくるもんだと思う。山は多いが宝の山だ。
また翌日、ロスリー商会に新商品のプレゼンを行い、契約が即日成立した。
快進撃が今、始まる・・・




