初めての誕生日
今日は誕生日である。ローサの。
彼女は、その生い立ちから家族はもちろん、生年月日も分からない。
分からないから、あの日を誕生日に・・・
そして今日で11才とした。
まあ、中世では偉人でさえ、生没年不詳が多いのだ。
私だって、後世に生年月日が伝わらない可能性はある。
それはさておき、今日は食堂でささやかな誕生会。
メンバーは、やはりいつものとおり。
「ゲルハルトが飾り付けを頑張ったおかげで、随分豪華になったね。」
「ワッハッハ!長女の誕生日だから、いつもの5割増しだ!」
言うと思ったよ、普段から働け!
「本日は腕によりを掛けました。是非、ご賞味あれ。」
うん、お金かかってるの良く分かるよ。
「もう1年経つんだねえ。それにしても、オルガがこれほどローサちゃんを仕込むとは思わなかったねえ。」
「まあまあ、私もそうですわ。でも、ローサちゃんとってもいい子でしたの。」
「確かに、最大の功労者はオルガさんだね。」
「あらあらまあまあ。とても有り難いお言葉ですわ。でも、一番頑張ったのはローサちゃんです。」
「そうですね。泣き言も言わず、良く頑張ったと思います。」
「今や姉さんを超える戦力ですからね。」
「そして、ウルはその姉の下。」
「そんな訳ないでしょう!」
「では、早速ですが坊ちゃん、皆でいただきましょう。」
アイリーン姉妹を華麗にスルーして、お誕生会は始まる。
そしてプレゼント贈呈、みんなは木製だけど結構いい感じの櫛、私はガラスをあしらった髪飾り。
あんまり高価なものは遠慮しそうだったからこれを選んだ。皆もそう思ったらしい。
「皆さん、あ、ありがとうございます。大切にさせていただきます。」
「遠慮無く使いなよ。誕生日は毎年くるんだから。」
「マリアさんも毎年ちゃんと来てんなあ!」
「ゲル!お黙り!」
地雷見えてたよ!
「あらあらまあまあ、またゲルさんはお給金減額ですねえ~。」
「うむ、ゲルハルトに給金などいらん。こやつはいつも遊んでおる!」
はいそこ、フラグ立ってるよ。
「しかし、ローサも来たときよりは随分、健康的になりましたなあ。」
「そうねえ、あの時は正直、助からないと思ったよ。」
「皆さんの、その、おかげです。今はとても幸せで、その、今でも信じられなくて、」
「いいんだよ、ここで一杯幸せになっても、笑っても・・・」
何かすごく感動的でいい誕生会だ。
「あの、今回の料理は新作なのですが・・・」
うん、いつもごめんね。




