吾輩は教師である。
学校が開校した。
開校式兼入学式には出席したが、やはりあれはいつ見ても新鮮で晴れやかな気持ちになる。
まだ生徒数が少ないため、彼らを街中で見かけることは無いが、子供達の通学する姿が街の風物詩になってくれると嬉しい。
そう、吾輩はどこまでも教師なのである、決して金のことばかり考えている訳ではないのである。
その証拠に、私は教育活動、いや、教師をしている。
「ここにりんごが一つ、もう一つここにりんご、さて数えてごらん。」
「いち、に。」
「そう、これを紙に書くと、1と1で2なんだ。これを足し算っていうんだよ。」
ここに一人の生徒がいる、そう、ローサだ。
彼女は領民学校を今年卒業する年齢なので、教育を受ける機会がない。
そこで、休日にこうして教えている訳だ。
もちろん教科書は学校と同じ物を使っている。
「はい。とてもよく分かります。ありがとうございます。」
ニコッと笑顔になる。とても可愛い。生意気な久保ちゃんとは大違いである。
「これがミルク、これが味、これは良い、という意味の言葉だよ。」
「ミルク・・・良い・・・味・・・・おいしい・・・」
「そう、ちゃんと話す言葉と同じ文字があって、二つの言葉を合わせるともっと素敵な言葉になるんだよ。」
「読めました!」
本当にいい笑顔をする。
「よくできました。これならすぐ本も読めるようになるし、計算もできるよ。ローサは本当に頭がいいと思うよ。」
「・・・・あ、りがとう、ご、ございます。」
照れてる照れてる。センセイもデレデレだよ。
「とは言っても、うちには良い本がないからなあ。もし、興味があるなら神聖教典っていうのがあるけど、そのくらいかなあ。」
「お祈りの本、でしょうか。」
「そうそう、所々難しい言葉はあるけど、基本は親が子供に読み聞かせるものだから。もう少し言葉の読み方を覚えたら、読んでみるといいよ。」
「はい、分かりました!」
久保ちゃん、これ、これなんだよ!




