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リンツ伝  作者: レベル低下中
第一章 領地改革編
103/1781

製紙工廠も完成する

 ロスリーの北、館にほど近い場所に製紙工廠が完成した。


 何故、工業団地内に建設しないかというと、ここがニルヴェ川に近く、大量の水が手に入るからである。そして、上水用の水道橋も工場近くを通っている。

 ちなみに隣に食品や兵器工廠が建設中である。



「今まで、機械の工場ばかり見てきたせいか、随分シンプルですな。」

「まあ、樹木を粉砕したり、漂白したりした後は、紙すきですから。」

「原料はいくらでもありますしな。」

 原料はウラヌス半島に山積みされている。

 ツバキを植えるために伐採された樹木である。


「それで、紙を裁断する機械がこれですな。」

「そう、あとは紙をロール状に巻くのがこのローラー。」

「全て手動ですな。」

「常時稼働させるなら蒸気で行くけど、紙の生産そのものが人力だから。」

「ここで紙が生産されるとは、まだ少し信じがたい、いや、坊ちゃんの発明は失敗したことがありませんからな。きっと驚くような物ができるのでしょう。」

「うん。取りあえずは筆記用紙とトイレットペーパーだね。」


「トイレ、ですか。」

「そう。排便をするための専用の部屋を作る。今までのおまる生活とは一線を画することになるね。」

「そこで使う紙とは・・・情報が多すぎて付いて行けませんな。」

「うん。水に溶けやすい紙。デンプンを混ぜるんだ。」

「水に溶ける。本末転倒な紙ですな。」

「うん。でも水洗トイレには絶対必要だから。」


「すいせん?また何か企んでおりますな。」

「水道ができたら屋敷に作るから楽しみにしててよ。」

「トイレ、紙、水。それにしても、よくそんな発想になりますな。」

「全てはお金、だね。」

「黒いですなあ。まあ、生活が激変する予感がします。」

 全ては風呂、トイレ、食事のために頑張ってきた、といっても過言ではない。

 いや過言ではあるが・・・


「他の工廠も程なく完成いたします。」

「そうだね。兵器量産も急ぎたいし、食品工廠では酒だって造りたい。ああ、それと印刷工廠の用地って、新邸の向かいなの?」

「ええ、屋敷の南側を考えております。きっと坊ちゃんのお部屋の正面に工場が見えます。」

 いやあ、もう少し何とかならないの。

 窓から工場って・・・


「まあ、買い取った土地の形状から、こうせざるを得ませんでしたので、何卒ご容赦のほどを。」

「うん。まずは出来ることが肝心だから、ね。」


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