製紙工廠も完成する
ロスリーの北、館にほど近い場所に製紙工廠が完成した。
何故、工業団地内に建設しないかというと、ここがニルヴェ川に近く、大量の水が手に入るからである。そして、上水用の水道橋も工場近くを通っている。
ちなみに隣に食品や兵器工廠が建設中である。
「今まで、機械の工場ばかり見てきたせいか、随分シンプルですな。」
「まあ、樹木を粉砕したり、漂白したりした後は、紙すきですから。」
「原料はいくらでもありますしな。」
原料はウラヌス半島に山積みされている。
ツバキを植えるために伐採された樹木である。
「それで、紙を裁断する機械がこれですな。」
「そう、あとは紙をロール状に巻くのがこのローラー。」
「全て手動ですな。」
「常時稼働させるなら蒸気で行くけど、紙の生産そのものが人力だから。」
「ここで紙が生産されるとは、まだ少し信じがたい、いや、坊ちゃんの発明は失敗したことがありませんからな。きっと驚くような物ができるのでしょう。」
「うん。取りあえずは筆記用紙とトイレットペーパーだね。」
「トイレ、ですか。」
「そう。排便をするための専用の部屋を作る。今までのおまる生活とは一線を画することになるね。」
「そこで使う紙とは・・・情報が多すぎて付いて行けませんな。」
「うん。水に溶けやすい紙。デンプンを混ぜるんだ。」
「水に溶ける。本末転倒な紙ですな。」
「うん。でも水洗トイレには絶対必要だから。」
「すいせん?また何か企んでおりますな。」
「水道ができたら屋敷に作るから楽しみにしててよ。」
「トイレ、紙、水。それにしても、よくそんな発想になりますな。」
「全てはお金、だね。」
「黒いですなあ。まあ、生活が激変する予感がします。」
全ては風呂、トイレ、食事のために頑張ってきた、といっても過言ではない。
いや過言ではあるが・・・
「他の工廠も程なく完成いたします。」
「そうだね。兵器量産も急ぎたいし、食品工廠では酒だって造りたい。ああ、それと印刷工廠の用地って、新邸の向かいなの?」
「ええ、屋敷の南側を考えております。きっと坊ちゃんのお部屋の正面に工場が見えます。」
いやあ、もう少し何とかならないの。
窓から工場って・・・
「まあ、買い取った土地の形状から、こうせざるを得ませんでしたので、何卒ご容赦のほどを。」
「うん。まずは出来ることが肝心だから、ね。」




