金を生み出すもの
引き続き。
「お金を生み出す方法とは・・・是非とも知りたいのですが・・・」
異世界モノには先人、いや先輩諸氏が発案した様々なアイデアがあるのだよ。
「まず、概念図で説明するが、これはリバーシという玩具だ。黒と白に塗り分けられた石か木材で製作できる。ルールは簡単だ。」
セバスが唖然としている。
「そして、これがソロバンというもの。簡易に計算ができる器具だ。これも木材で製作できる。さらにこれは剣玉という玩具だ。見てのとおり単純な造りで、これも木工職人がいれば簡単に製作できる。早急に試作品を作り、帝都で特許を取れば、後はロスリー商会にでも販売させればいい。」
この世界にも特許や著作権の概念が既に存在している。
しかも、特許の有効期限は発明者が亡くなるまでという、破格の条件だ。
さすが西洋の契約社会、そういう方面は抜かりがない。
東洋だとこうはいかない。
「これらは使用許可料だけでも結構な額になりそうです。」
「それに、販売額の1割でもいただければ、一気に領地改革は進むと思う。」
「これは至急進めます。ところで、人材の確保はどのように?」
「当面はロスリー市役所、ロスリー商会、エネル兄弟商会の従業員を借りるしかないと思う。とにかく、読み書き計算のできる人材が、この辺境の地には居ない。」
意外に思うかも知れないが、ロスリーやスーディルには市長がおり、市役所もある。
帝国内のそれなりの町は皆そうである。
そういった行政機関も領主の傘下に入っている。
大きな街だと市長が領主家の分家だったり、下位ながら爵位持ちだったりする。
「将来的には、領内の子供に教育を施す仕組みを考えているが、当面は実社会に人材育成をゆだねるしかない。各商会や市役所で大人を育て、こちらに供給してもらう。」
「それが実行部隊になると。」
「そう。ただし、本拠となる政庁や学校など各種施設の候補地は今からでも選定できる。ところで、うちの今年度予算と累積債務額っていくらだったっけ?」
「予算総額はざっくり1100万ディリ、うち債務利子返済額約460万ディリを差し引いた額が予算になります。累積債務額は昨年度末時点で約5800万ディリです。」
「普通ならもう破産してるよね。」
「おそらくは・・・」
「ちなみに、母へ仕送りしている額はいくら?」
「年額240万ディリを月割りで送金しております。かつて一括送金したら追加が相次いで本当に破産寸前になったので。」
「じゃあ、今月分から止めて。父の給金でどうにでもなるでしょ。」
年利8%って・・・しかも母付きで。




