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保護猫と私  作者: 光内椿
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年末年始

「いつまで寝とるの」祖母の不機嫌そうな声で目を覚ました。スマホを見ると9時。やーもう少し寝かしてほしかったなぁ。そんなことを思いながら体を起こす。毎年大晦日は私の家族と祖母の弟家族で餅つきをする。80年ものの石臼と大叔父手作りの杵を使って男性陣が餅をつき、女性陣が切って丸める。餅とり粉で手が真っ白。沢山のあべかわ餅と御鏡を用意した。みんなで出来立ての餅にハム、卵焼き、シジミ汁やみかんをおなか一杯食べ、もろふたにいっぱいの餅を入れ家に帰ると、三毛猫が玄関前でお座りしている。ここから人間が出入りすることがわかっている様子だった。丁寧に座りなおしてこちらを見つめる。あまりの可愛さに悩殺されそうである。餅を家に運んだあとは猫ちゃんタイムだ。

フリースにマフラー、ニット帽も被って猫に会いに外へ出る。草をちぎって猫じゃらしにしてみたがあまり食いつきはよくなかった。渋々遊んであげているというような様子だ。それよりも、太ももに乗りたかったらしい。一息ついているとのしのし乗ってきた。しばらく撫で撫でタイムを満喫した。ふわふわの毛、太ももに当たる肉球、ピコピコ動く耳、全てが可愛かった。

夜、様子を見に勝手口から降りる。三毛猫は段ボールの下で鳴いていた。様子がおかしいと思って近づくと、大きな大きな、本当に大きなキジトラ猫が鎮座していた。温かい場所を取られてしまったのである。「これはいけん!」と祖母が段ボールを土間に移動させ猫も一緒についてきた。祖母はあんなに猫を避けていたというのにおかしなことだ。しかし、猫を飼いたかった私には好都合だったので全く反対しなかった。それに我が家で一番権限が強いのは祖母だ。父も母も特に反対しなかった。

そして最初は勝手口までだった猫の侵入範囲が脱衣所までに広がっている。祖母である。自分でここまで!と範囲を決めていても次の日には広がっている。はぁ。おばあちゃん…。頑なに飼育を拒否してきたのにこの変わりよう。猫は人を変えるらしい。それからしばらくの間脱衣所でストーブを炊きながら、猫と過ごす時間が幸せだった。長い尻尾をくるりと体に巻き付けて座る尻尾マフラーがなんとも愛らしかった。そして膝の上で座る猫を見て脱衣所を自分の部屋にしたいと思っていた。

冬休みが明けて実習が始まった。看護実習である。何人も泣くほど厳しい指導を受け、記録に追われる毎日。連日2時3時まで記録をして6時には起きて丸1日実習。かなりしんどかった、気が狂いそうになった。眠いが記録が終わらない。そして猫は寂しいのか私が離れると鳴いている。眠気を飛ばすために机に頭突きして何とか目を開け記録をしていた。頭突きの音に祖母が目を覚まして様子を見に来るほど。今思えば相当やばいやつである。


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