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保護猫と私  作者: 光内椿
3/7

バイトの時間

バイトに来た。私はイタリアンレストランでホールスタッフのアルバイトをしていた。私が中学生の時にできたお店で、家族で食事に訪れてから、こんなお店で働きたいと思っていた。美味しくてキラキラしてホスピタリティ高くて。高校はバイト禁止の校則で、大学に入っても学業優先だからなかなか始められなかった。大学にも少し慣れた夏、大好きなお店でバイトを始めた。

そして今日は12月30日年末。どこの飲食店もそうだと思うが、クリスマスから年始にかけてものすごく忙しい。家族連れもカップルも沢山訪れる。

「いらっしゃいませ!2名様ですか?只今満席でしてこちらにおかけください。メニューをお持ちします。」ニッコリ得意のご案内。

そして電話が鳴る「お電話ありがとうございます。モチモチパスタ出雲店光内がお伺いします!」「2名なんですが今から行けますか?」と。「ありがとうございます。申し訳ありませんが只今満席でして、順番はとらせていただきますが、ご来店までに順番がまだのこともございます。それでもよろしいですか?はい。はい。ではお待ちしております。」

パスタが出来上がって提供のベルが鳴る。「はい!行きます!海トマ、ワン」「12番です」「12番テーブルいきます」「お願いします」「了解です!」

「お待たせいたしました。新鮮魚介の漁師風パスタをご注文のお客様。チーズをおかけすることができますがいかがいたしましょう?」

忙しく時間は過ぎていった。バイトが始まる前は猫のことが気になってそわそわしていたが、始まるともう戦場。

ストーブもサンド場もホールも洗い場もそれぞれ忙しく働いている。マネージャーは厳しい方で叱責が怖い。私や仕事のためとわかっていても怒鳴られるのは嫌だった。忙しければミスも出やすくなる、見落としもしやすくなる。まぁまぁ怒鳴られながらもなんとかランチタイムが終わった。

休憩時間になってまかないをいただく。今日は野菜のボロネーゼだ。できたてお皿も持てないほど熱々。スプーンとフォークで一気にほぐして、ミートソースと絡める。生パスタは賞味期限10分冷めるまでに美味しく食べてしまう。そして携帯をつつきながら休憩する。ディナーもランチほどではないが忙しいはず。ふぅ…と息をつくと、猫のことが頭によぎった。どうしているだろうか、母や祖母にご飯をもらっている頃だろうか。それとも段ボールハウスに入りこんでいるだろうか。今日は冬休みだから張り切ってバイトを長時間入れてしまった。猫のことが気になるが帰られない。

早く家に帰って猫の様子を見たかった。

なんとか終わり、バイトからの帰り道、もう少しで日付が変わる。逸る気持ちにいつもよりアクセルを踏んでしまう。

あの子はもう寝ているだろうか。猫は夜行性と聞くし、どこかご飯食べに狩猟タイムだろうか。バイト代でどんなおもちゃを買ってこようか。頭の中は、猫・猫・猫でいっぱいである。家についた。シートベルトを外すのも焦りすぎて上手くいかない。家族は寝ているからそっと玄関の引き戸を開けるがたぶんいつもより大きな音がしてしまった。でも、一歩中に入るといつもと変わらない。廊下を通り、脱衣所の窓を開けて外の様子を見る。段ボールが増えている。多分増設させたのは祖母である。猫に夢中なのは私だけではなかった。猫は段ボールの中に入っているのか、それともどこかに行ったのか姿は見えなかった。

温かくして布団に入る。明日、いや、今日は大晦日だ。

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