表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
保護猫と私  作者: 光内椿
1/7

黒い尻尾

出会いは突然だった。

どんより曇った空、冷たい風が吹き、時折雪が舞う12月29日、家族4人で昼食を摂っていた。

寒い日にぴったりのメガネが曇るほど熱々のラーメンだった。

食べ終えて女3人で片づけをしていると祖母が「あっ」と何かに気づいた。

ゆらゆら揺れる黒くて長い尻尾が見えた。

思わず窓に張り付いて外を見ると猫がいた。目に飛び込んできたのは黒い尻尾と茶色と黒が混ざったお尻。

可愛いと思いつつ通り過ぎた猫を眺めていると祖母が「こらやっ」と声をかけていた。野良猫だから逃げるだろうと望み薄に思っていたが、意外にもその子は近寄ってきた。白と茶と黒三毛猫だった。鼻は白く、ハチ割れでミントグリーンの瞳をしていた。

祖母もまさか近寄ってくるとは思っておらず、驚いた顔をしていた。そして近寄ってきたからには何かあげないとと思ったらしく、冷蔵庫から豆腐を取り出し皿に乗せ、鰹節をトッピングしていた。今思えばすでに祖母は虜になっていたのだろう。その子はすぐに豆腐にかぶりついていた。おなかが減っていたのだろう、すぐに空になってしまった。まだ食べたい様子の猫に次は湯引きした牛肉を祖母が与えていた。「猫は毛がね~」と嫌そうに言っていた祖母なのに。


私は幼い頃から動物が好きだった。何度も強請ったが「動物は死んだ時がね、悲しいから。」と許してはもらえなかった。私が生まれる前、我が家は黒柴犬を飼っていたそうで写真が残っている。黒色の「クロ」という安直な名前。祖父が貰ってきたらしい。とても可愛がられていたが、フィラリア症で亡くなってしまった。可愛いがゆえに失ってしまった悲しみが祖母や家族を襲った。それからは動物を飼わなくなってしまった。私が生まれる前の話である。

私の家族は「犬は散歩が大変だから。」「猫は毛が落ちるから。」とあれこれ理由をつけて飼おうとはしなかったし、そんな姿を見てきた私はたまに見かける野良猫や近所を散歩している犬を楽しみにするくらいで止めていた。そうやって動物を飼育することはできないだろうと思っていた。


そんな祖母が三毛猫にご飯をあげたことは意外だった。そしてその子はおそらく食べ物を目当てに我が家に留まった。

雪が舞う季節である。夕方、私はブランケットを敷いてあげようと勝手口から出たが、祖母が段ボールにタオルを敷き詰めているところに出くわした。バツの悪そうな顔である。私は持っていたブランケットを祖母に渡した。それをタオルの上に敷き詰める祖母。なんだかんだ言って見放すことができないようである。知らない匂いは嫌がるかと思ったが案外すんなり三毛猫は段ボールに入っていった。

段ボールいっぱいの布と丸まっている三毛猫。実に可愛い。このままうちいてくれたらいいなと思った大学2年の12月29日。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ