表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/18

5.天使との再会

翌日。

俺は学校を休み、午前中にひとみの小学校への説明や、これからの相談をし、役所に書類を出したり貰ったりしながら手続きを始め、午後に病院に来た。


今日からひとみは更に詳しい検査だ。検査だけでも長期になるらしい。見ている方が辛い。今日は骨髄液を採る検査もしたので、今ひとみは麻酔で寝ている。


「起きて、痛くなければいいな……」


俺はひとみの頭をそっと撫でた。

まだ、俺の手のひら位の大きさしかない。

こんなに小さいのに。検査だって怖いだろうに、泣くのを堪えて頑張っていた。


「翔真も言ってたけど。本当に、俺が変わってやりたいよ」


「お兄ちゃんたち、優しいね」


一人言に返事が返って来たことに、ビクッとして振り返ると、ひまりがいた。


「ひまり?何でここに。一人か?」


「お手伝いさんと一緒よ。下のロビーで待ってもらってるの。実は昨日ね、お兄ちゃんに聞いて心配だったから、お手伝いさんにちょっとおみまいに連れてきてもらったんだ~。だから、お部屋しってるのよ」


「そうか。わざわざありがとうな」


「ううん。ひとみちゃん、がんばったんだね。えらいね」


ひまりも、ひとみの頭をそっとよしよしと撫でる。

そのひまりの顔が、何故だかやけに優しく輝いて見えて……俺は目を瞬いた。


妙に神聖なものを見たような心地だ。うまく言葉にできないけれど。


「……ひまりちゃん?おにい、ちゃん?」


「ひとみ!起きたのか?痛くないか?」


「うん、ちょっと変な感じだけど、だいじょうぶ……へへ、ひまりちゃんによしよしされると気持ちいいよ」


ひとみがふにゃりと笑う。ほっとする。


ひまりも嬉しそうだ。「じゃあ、いっぱいよしよしするね!」と、張り切っている。二人が尊い。


「じゃあ、兄ちゃんちょっと看護士さん呼んでくるから……」


と、言いかけた所でドアがノックされ、優真翔真が部屋に入って来た。


「ひとみー、来たぞ!どう?調子は。辛くない?」

「あれ、ひまりだ。来てくれたのか?」


二人が来ると、ますます賑やかだ。俺は看護士さんを呼ぶために、二人に頼んで部屋を出る。


「優兄ちゃん、翔兄ちゃん、部活は?」

「大丈夫だよ!ひとみの方が大事だもん」

「そうそう。顔見ないと、兄ちゃんたちも心配だからな」

「……ありがとう……」


部屋を出る間際に聞こえてきた、三人の会話。気遣い屋のひとみが、珍しく素直に嬉しそうな顔をして。


そして、その景色を見つめるひまりが、やっぱり神様みたいに優しい、本当に優しい顔でいるのを、俺はまた見た気がしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ