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赤き贖罪の英雄譚 -The Legend Of Re:d Stone-  作者: シクル
Season4「The Legend Of Immortal Witch」

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episode111「必ず戻る-Stay with You-」

 と、そのような夜があったばかりに、ミラルは翌日まともにチリーの顔が見られなかった。


(……あれって……告白だった……!? しかも私の方から……!?)


 それはもう、事実上どころかほぼ直球のプロポーズである。


 昨晩のどこを思い出しても恥ずかしさで頭が茹で上がりそうだったが、言った言葉には何一つ嘘がない。


 チリーは一晩寝れば歩ける程度には回復していた。


 ウヌム族の里でもらった治癒の秘薬は、まだ温存してある。すぐにチリーに飲ませようと思ったミラルだったが、勿体ないからと本気で拒否されたので諦めたのである。


 チリーは動けるようになると、すぐに出発の準備を始めた。シュエットとシアも、すぐにでも出発出来ると意気込んでいた。


 ミラルだけが、なんとなく昨晩の時間にしがみついているような感じがして余計恥ずかしかった。


「……昨日なんかあったわね?」

「ありませぇん!」


 荷物を整理している途中、勘づいたシアに問われ、ミラルはあたふたしたままそう答える。


 これではもうありました、と白状しているようなものだ。


「まあいーけど? 困ったことがあったらなーんでもお姉さんに聞きなさいね」


 なんだか楽しそうに肩を叩かれ、ミラルはとりあえず小さく頷いた。



 各々が準備を整え、一度客間に集まった。


 チリー、ミラル、シュエット、シア、そしてアルドとアグライの六人だ。


「先に目的地を再確認するぜ。次は、東国だ」


 チリーの言葉に、ミラル達は強く頷く。


 ウヌムの洞窟にあった石碑の予言は、的中しつつある。テオスの使徒は、実際に蘇り、全てを闇に葬らんとして動き始めている。


 だが予言の後半。


 東国に眠りし虹の輝きが、闇を照らす剣となる。


 これは恐らく、東国に(テオスの使徒)に対抗し得る何かがあるということだ。


 テオスの使徒と戦わなければならなくなった以上、それが何であろうと手に入れる必要がある。


 そのためには、東国へ向かわねばならない。


「その前にまずは一度ウヌム族の里に戻る。石碑の確認と……例の結晶を回収するぞ」


 ウヌムの洞窟にあるあの結晶は、ウヌムの遺体から漏れ出た魔力の結晶だ。


 今回の戦いで、シュエットはそれを使って元素十字エレメントクロスを起動した。あれは、物質として存在し、かつ人間が使用可能な魔力なのだ。


 ミラルが今後も聖杯の力を使うのであれば、一々エリクシアンから魔力を吸い取ってなどいられない。ウヌムの結晶を使って、能動的に魔力を補充する必要がある。


 それはチリーも同じだ。


 ゼクスエリクシアンの力を使う度に消耗していては、いざという時に連戦が出来ない。あの結晶から魔力を吸収出来れば、あの力を続けて使用出来る可能性もある。


 どちらにしても、あの結晶は必要だ。


「で、その次は一度フェキタスに戻る。東国は島だからな、海路を行くならフェキタスが一番良い」


 フェキタスシティは港町だ。それに、アギエナ国内ならある程度ツテもある。


「クリフに船を手配してもらおうぜ」

「なんで殿下を呼び捨てなんだお前は……」


 呆れるシュエットと、苦笑いするミラル。しかしチリーは気にせずに話を続けた。


「俺達に時間の猶予がどれだけあるかはわかんねェ。だが出来る準備は全部やるべきだ。ゲルビアのこともある。いつ襲われるかわかんねェまま、きつい旅路になる」


 ノアとの戦いの直後でも、今は足を止めるわけにはいかない。動けるのなら、動けるだけ動いて戦いの準備をする必要がある。


「……力を貸してくれ! 俺と来てくれ!」


 全員を順番に、まっすぐに見つめてチリーは言う。


「チリー……」


 今までは背負い込もうとしていた。人にものを頼みたがらなかったチリーが、今はみんなの力を必要としている。


 それが、ミラルにとって……いや、シュエットやシアにとっても嬉しかった。


「ふ……当たり前だ! 俺なしで何かを成し遂げられるわけがないだろう!」

「ま、乗りかかった船だしね。最後まで付き合ってやるわよ」


 口々にそう言って、シュエットとシアは微笑む。


 そしてミラルは、ちょっと頬を赤らめながらもチリーをまっすぐに見つめた。


「……私の答えは、もうずっと前から決まってる」

「……ああ」


 そのまま二人はジッと見つめ合う。


 その様子を見て、アルドが口をあんぐりと開けた。


「おい! ちょっと待て! なんだその空気は! なんかあったろお前ら! お父さん聞いてないぞ!」


 取り乱すアルドをなんとかアグライがたしなめ、どうにかその場を収める。チリーとミラルは、ハッとなって互いに顔を背けていた。


「あ~~クソ! まあいい! お前に託す! もう全部託す! 任せた!」


 喚くように言ってから、アルドはチラリと自分の足を見る。


「俺はここに残る。頼むぞ……四人共」


 アルドの言葉に、四人は力強く頷いた。


「我々はここで待ちましょう。姫様がお戻りになられるこの場所を、守らなければなりませんな」

「ええ、お願いね」


 ミラルがそう応えると、アグライは穏やかに微笑んだ。



***



 そして旅立ちの時は訪れる。


 祖国の香りに別れを告げて、ミラルはチリーと共に旅立つ。共に未来を生きるために。


 四人の出発を、アルドとアグライが見送る。


 テイテス城の門の前で、向かい合い、互いに託す。


 この先の未来を。


 戻るべき場所を。


「……お父様!」


 たまらなくなって、ミラルはアルドに抱きついた。


 懐かしい父の匂いに包まれて、ミラルは安堵する。こうしていられるのは今だけだ。次に会えるのが、どれだけ後かわからない。


「必ず戻ります……ここへ……!」

「……ああ、待っている。必ず戻ってきてくれ」


 ミラルの頭を優しく撫でて、アルドはチリー達へ視線を向ける。


「お前らも必ず無事で、もう一度俺に会いに来てくれ」

「当然だ!」

「ま、その内ね」

「……ああ、必ず戻るぜ、ここに」


 それぞれが答える。そしてそれが、旅立ちの合図になった。


「世話ンなったな」


 そう言ってアルド達に手を振るチリーと、共にミラルは歩き出す。





 目指すは東国。闇を照らす虹の輝きを求めて。


 赤き石を巡る伝説が、また一歩未来へと進む。


このエピソードでSeason4は一旦終了します。番外編エピソードを後日掲載予定ですが未定です。

これまでの連載で色々と思うところがあり、態勢を立て直すためにしばらくの間休載する予定です。

Season5の構想に時間がかかるのと、作品そのものの修正やリニューアル等を検討しています。また、別作品の企画を立ち上げ中ですので、その関係でもあります。

継続読者の皆様は、よろしければブックマークを外さずにお待ちいただければと思います。


作品そのものの削除や、未完のままでの終了はあり得ないと断言しますので、今しばらくお待ち下さいませ。


Season4までの間、お付き合いいただきありがとうございました。

今後も連載再開や新企画に向けて活動を続けていきます。



活動報告にも書きました。

https://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/3435440/

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