えんぴつを削る
なろうラジオ大賞用の作品となります。
以前に書いた詩を元にしてます。
デザインナイフと2Bのえんぴつ、そして菫色の無地の便箋。
小雨のなか、桜色の傘が恨めしそうな音をたてて私を急かす。可愛らしいデザインの紙袋の中で真新しいえんぴつがカチャカチャと泣いている。
君の笑顔が陰って見えたのは、きっとあの子のせいだろう。後ろ暗い想いを抱えながら、今がチャンスなんだと家へと走る。
「真奈美ー、おかえりー、ご飯できてるわよ。すぐに食べてから部屋行きなさい」
「ごめん、母さん。今日はいらないっ」
「えっ、ちょっと、あまっちゃうでしょ。いらないって、具合でも悪いの」
「…………ごめん」
「ちょっ、真奈美っ」
母さんに悪いと思う気持ちを部屋の外に置き去りにする。えんぴつを取り出してナイフを使って削りはじめる。
「いたっ」
指を切る。
少し滲んだ血を舐めて、またえんぴつを削る。
鋭く鋭く、えんぴつの芯を削り出す。
私の弱い筆圧じゃ、君に想いは届かない。
だから、鋭く鋭く研ぎ澄ます。
君の心に刺さるように細く鋭く、一文字一文字の画のひとつまで鋭利に煌めかせる。
ねぇ、傷付いた君を癒せるような可愛らしい子じゃなくてごめんね。
2Bのえんぴつはか細い筆圧の私の線を強く強く後押ししてくれる。でも、2Bのえんぴつはすぐ丸くなってしまうほどに脆い。
そんなお前を鋭く鋭く研ぎあげる。何度も何度も削り出す。
鋭く脆いお前の芯が君の心に刺さるよう、君の心で折れるよう。君のなかで、ほくろのように残るよう。
ねぇ、きっと君は私なんて覚えない、うっすらぼんやりとしたクラスメートの一人なんて、君にはきっと見えてない。
雷雨の音が強くなる。雨の匂いに倒錯する。
土を押し退ける雑草のように地味に地味にひっそりと、私はあなたを見つめてた。
でもね、ひまわりのような君に、ほんの少し私を残してもいいじゃない。
君に届ける無地の便箋。
君の心に刺さるよう。
君の心に残るよう。
ただ、2Bのえんぴつを削る。
鋭く鋭く。
君の心に残るよう。
君の心に刺さるよう。
感想お待ちしてまーすщ(゜д゜щ)カモーン