第九話 塩漬け剣士ソルト
ーー地下五階の大広間。背後に直下の戦線を展開している場所にて、王国騎士団の精鋭が並び立ち、ミーティングが行われている。
「……と言う訳で、やっと纏まった予算が降りたので、我が騎士団最強の塩漬剣士の“ソルト”を復活させた」
騎士団長の挨拶に“最強剣士のソルト”は面目無さそうに頭を下げる。
途端にまばらな拍手と、剣で床をドゴドゴ叩く音が響く。
「で、だ。騎士団長である聖騎士の俺と剣士の“ソルト”……それから最近やたら幸運でレベルドレインを一切受けない騎士スルリグ、あと後衛に爆装師。この四人で組もう。これが今の俺達が出せる最高戦力だな。…………殺るぞ」
「え、誰をですか?」
最近入った従騎士が小さな声でそう言った。
「霞のロードヴァンパイアだよ」
騎士団長は笑顔で答える。
「奴さえ仕留めれば……」
ソルトが剣に映る自分の顔を見ながら呟く。
「俺達はもごもご耐えられる」
爆装師は薬草を口に含みながら話す。
「耐えるだけじゃねぇ……こっちから打って出る事も出来るぜ……」
スルリグは一歩前に出て剣を差し出した。
それに騎士団長、ソルトと剣を重ねていく。
爆装師は鞭を丸めてそっとその上に置いた。
「殺るぞォオオオオ!!」
「オオオオオオぉ!!」
地下五階を揺るがす轟音。
それは二年に渡る鬱憤を晴らすべく、新入りの従騎士を除く騎士団全員が腹の底から吐き出した獣の如き咆哮だった。
四名の精鋭達はその有り余る闘志を温存し、霞のロードヴァンパイアが現れるまで後方で待機する事となる。
秋の収穫を終え、徴収した税金の三割を投入して生き返らせた数人の騎士達は、彼等四人の“エース”が抜けた穴をしっかりと埋め、直下の戦線を支えていた。
……決戦は近い。