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第六話 ※おおっと※


 ーー地下五階。ヘラヘラしたレイアードの肖像画が立て掛けられている玄室。


 多くの騎士団員は気味が悪いと言って休憩するのも敬遠する部屋だが、変わり者のスルリグは寝られれば関係ないーーとお気に入りの昼寝場所としていた。


 それどころか、彼はお道化ているレイアードの絵から伝わって来る絶妙な間抜けさが気に入ってすらいた。現場の兵士にとっての敵将は、敵である事は二の次なのだ。


 いつもの様に肖像画に挨拶して寝る準備を始めた。


「寝床借りるぜ……レイアードさんよ」


「おっ、ちゃんと星脈の欠片を持ってきたね。地下六階にご案なーい! ……って君はいつもそこで昼寝してるベガーじゃん!」


「誰がベガーだ!」


 なんと肖像画のレイアードが話し掛けてきた。


「あちゃー、間違えちゃったか。で、その石はどの冒険者から貰ったの? まぁ誰でもいっか、ご案なーい!」


「ちょ待てよ!」


 彼の意識は遠のき、間もなく戻ってきた。


 辺りを見回すと、石積みの壁に石積みの床。


 天井の高さから見ても地下五階のようだ。だが、ニ年間滞在した筈なのに、この場所の記憶がない。


 彼は、ニ年の間ずっと謎だった……敵の沸き出す通路の先……に飛ばされたのだった。


「ここは……未踏破地区……か。レイアードは冒険者がなんとかとか言っていたが……そうか、実はもう冒険者達はこの先に進んでいたのか」


 スルリグは先程のレイアードの台詞から汲み取れる事を頭で組み立て上げ、一つの仮説を出した。


(霞のロードヴァンパイアの持っていた石。コレ(・・)を持ってあの部屋に入ると、何故だか知らないがレイアードが第五階層の未踏破地区へと飛ばしてくれる……と言う事か)


 実際に彼はあの部屋に入っていく冒険者達を何度か見ている。なかなか出てこない事もあったからお楽しみでもしてるのかと思っていたが……。


(彼らはその先を探検していたのか)


 スルリグは夜目を利かせながら部屋を散策すると3つの扉と2つの立て看板を見付けた。


「この先幻想の岸辺」

「この先外へご案内」


 恐らく“幻想の岸辺”は地下六階への階段のある部屋で、立て看板のない部屋は“正規ルートでの入口”で間違いないだろう。そして、外への道はレイアードが冒険者達に気を利かして中継地を用意している……と言う事だろう。


 俺達の冒険者を使った奇襲作戦は初めからレイアードに筒抜けで、その上で俺達騎士団と冒険者達をおちょくっている……と考えれば辻褄は合う。


(この二年間。完全に遊ばれていたって事か)


 スルリグはその仮説に腹が立ちながらも、カチリとハマった部分が腑に落ちて、胸の何処かがスッキリとしていた。


(さて、どうするか)


 部屋で待つか、幻想の岸辺へ行くか、街へ戻るか、もう一つの扉を開けるか。


 ……。


(いや、これは一択だろ)


 彼は満身創痍の身体の疲れを思い出し、街へ戻るべく右の扉に飛び込んだ。そして、ヌワーンと言う音と共に迷宮の外に放り出された。


「この石……あの小憎らしいレイアードがキーアイテムにするぐらいだから色々と秘密がありそうだな。暫く持っておくか。あの部屋に入らなければ問題はなかろう」


 スルリグは久し振りの太陽に透かす様に宿敵から盗んだ石を掲げ、その光を透かす様に観察した。


 足の向かう先は迷宮。


 彼は他の玄室で一眠りした後、再び直下の戦線へ復帰する事だろう。



 物語はこの日から一ヶ月後……動き始める。



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