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第五話 彼方からのヴァンパイアロード


 地下六階。幻想の岸辺の玄室にてーー。


「思ったより深く斬られているか。……人間から傷を受けるのも久し振りだな」


 青白い顔の男は鏡を覗き込んでそう呟いた。


 その傷とは先程の戦闘でバケツヘルメットの男に付けられたものだ。圧倒的な力の差から、本来なら受ける筈のない一撃。


 それは、彼がこの迷宮に訪れてから時折受ける“知恵と経験をすり抜けてくる奇跡的な一撃”だった。


 ーー彼は、この迷宮の地下五階で魔法生物達と死闘を繰り広げている王国騎士団から霞のロードヴァンパイアと呼ばれる存在で、この世界にいる吸血鬼とも貴種吸血鬼とも違う種族である。


 とある地下迷宮の十階にて住処を得ていたのだが、次元をも切断する剣技を持つ侍の攻撃を受けて他の次元へと吹き飛ばされ、この迷宮へと迷い込んだのだ。


 この迷宮の地下十階(奇しくも偶然)には次元の狭間と呼ばれる異界への門があり、そこを通って来た彼は、僅か数歩でこの迷宮の試練を受ける事となった。


 ーーそれは、異界の神々とその臣下との血で血を洗う死闘。その連戦。


 そう、この次元の狭間はその豊富な星脈エネルギーの産地故に、他の次元へ移動出来る程の力を持つ神々が集まる神様銀座と化していたのだ。


 数多の冒険者の血を啜り、エナジードレインを通して生気を奪ってきた彼も、流石にここでは分が悪かった。


 ポイゾンジャイアントに匹敵する巨大な影、ファイヤードラゴンに匹敵するインフェルノドラゴン。


 手に負えない訳ではないが、果てのない戦いで消耗し続ければいずれは力尽きてしまう。


 そうならない為には、強い人間から定期的にエナジードレインをして体力の回復をしなければならなかった。


 それが、直下の戦線が停滞している原因ーー霞のロードヴァンパイアの定期的な来襲の正体だった。



 ーーズシン。 ーーズシン。


「全く……息を突く暇もないな」


 ヴァンパイアロードは玄室を揺らす地響きを聞くと、振り返って部屋を出た。そしてその後ろ手で「在室中」の札をひっくり返す。


 ……。


 足音の正体はスフィンクスと呼ばれる四足歩行の化物であった。更にその後ろをゾロゾロとマミーと呼ばれるアンデッドと棺の様な箱、そして神々しいオーラを放つ犬顔の魔物が続いている。


「またお前かーー冥府の神よ。貴様では何度やっても我には勝てぬよ」


「さりとて我も引けぬ。冥府を預かる身として不死のヴァンパイアなど許せる訳がなかろうよ」


「では、再び冥府とやらに叩きこんでくれる! 凍結マダルト!」


 霞のロードヴァンパイアの振り上げた両手から猛烈な吹雪が舞い起きる。


 その圧倒的な冷気がスフィンクスの脚を凍らせ、動きを鈍らせた。



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