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たとえばの話


 たとえば、天才と凡人がいるとする。


 凡人が千の努力をして百の結果を手にする傍ら、天才は十の努力で百を手に入れる。

 天は二物を与えないとよく言うが、そんなことはない。こういう天才は実際にわりといる。

 そんなやつが身近なところにいたら、凡人にしてみればバカらしくなるだろう。


 けど、この世界には「天才と凡人」以外にもう一種類のタイプがいる。


 それは、どれだけ苦労や努力を積み重ねても一の結果さえ手にできない無能だ。

 無能から見れば、凡人だって自分とは程遠い存在でしかない。無能はどれだけ頑張っても何ひとつ手に入れることができないからだ。


 どれだけ努力をしても、後から来た者に追い越され、指をさされて笑われる。

 何もできないと嘲笑される。

 足掻いても足掻いても何ひとつ身につかず、自分がどれだけ無能で無力なのか思い知らされるだけ。


 力と才能が絶対的なものとして君臨するこの世界ユルヴィクスでは、何の力も持たない無能や弱者はただただ罵られ、一生を日陰の中で隠れて生きるしかない。

 弱いからと助けてくれる人はほんのひと握り存在するかしないか、そんなレベルなのだから。


 だから、オレもそうやって目立たずひっそりと生きて静かに死ぬ。

 それが、定められた人生――の、はずだった。



 * * *



「私の伴侶になれ」



 思わず惚れ惚れするような造作の整った男にそんなことを言われて、サッと指輪でも差し出されたら世間の女の子は大体撃墜されるんだろうなぁ。

 なんて思いながら、目の前で至極真面目な顔をして佇む男を眺める。


 鮮やかな緑色の髪に、輝くような黄金色の瞳、スラリと伸びた長身なのに線が細いわけでもなく、筋肉がつくべきところはついたがっしりとした体格。何度見てもその顔面は腹が立つほど整っていて、じっくり観察なんてしなくてもイケメンだってことがよくわかる。


 その手には別に指輪なんてないし、こっちとしても惚れ惚れなんてしてないけど、してないんだけど――

 こいつはイケメンだ、イケメンなんだ、男なんだ。

 そしてオレも男なんだよ。どうしろってんだ、これ。



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