毒親誕生
私が生まれた当時は揃っていた両親も、
四つ離れた妹が生まれた頃には
父は居なく、片親だった。
だから私の家族構成は
母と私と妹と、それから祖母の4人。
女だらけの家庭。
当時は特段、寂しいという感情はなく
母が仕事で忙しくしていても
優しい祖母がお父さん代わりだった。
幼少期の私と妹は、所謂
『喧嘩するほど仲がいい』タイプ。
一緒に遊んでは喧嘩になり
また遊んで、を繰り返していた。
喧嘩はしても、大好きな妹。
だから可愛い妹をずっと見ていたくて
彼女の写真をアルバムから何枚も抜いては切り取り
机やノート、壁にまで
至る所、目につく所に張り付けていた。
だがそんな大好きな妹が成長するに従って
姉妹での格差が出てくるようになる。
いつからだったか
妹は私とおもちゃの取り合いになると
すぐに泣くようになった。
最初は何故泣くのか、分からなかった。
ただいつものように
おもちゃを取り合っているだけ。
取り合って、喧嘩して…
それがいつものパターンなのに。
呆気に取られてポカンとする私をよそに
母が怒鳴る。
「ヒトミ!!!」
え…?私何もしていない…
そう答える前に「妹を泣かせるな!」と
畳み掛ける母。
泣きながら、様子を伺う妹は
母の影に隠れながらニヤッと口角を上げる。
…あぁ、やられた。
早く訂正しないと。
これは妹の作戦なんだと。
そう思いながら、事実を伝える。
「違うよ。私は何もしてないよ」と。
しかし、母は聞く耳を持たない。
そればかりか、
「じゃあ何で妹は泣いてるの!」
「ヒトミのせいでしょ!」
「ヒトミが泣かせたんでしょ!」
「謝りなさい!」
と何があったかも聞かず、
一心に私を叱りつけた。
そしてお説教の最後は必ず
中指を少し立てた拳で、ゴツンッと
ゲンコツをされた。
妹の嘘泣き、母からの決めつけを繰り返す内、
否定するのも面倒になった。
どうせ私が何もしてないのに泣くのなら
本当に意地悪して泣かせてやれ。
どうせ怒られるなら
妹に痛い目見せてから怒られよう。
苦しめ、苦しめ。
お前が悪い。
お前が生まれたせいで。
お前のせいで。
私は、大好きだった妹が
大嫌いになった。
「妹の傍に居たら、また私が悪者になる」
そう自分の中で、位置づけられた妹を
避けるようになった私は
何度も願った。
「コイツさえ居なければ」と。
妹贔屓の母よりも
元凶である妹を憎むことでしか
怒りを抑えられなかったのだ。
勿論…
今となって思えば、私も大概悪かった。
妹が嘘泣きしたのは、当然妹が悪いと思うが
そこで捻くれた私も私だった。
ただ当時はまだ未就学児で
そんな妹を許す優しさなんて
微塵もなかった。