幕間
「分かっていましたが、本当にあの男は使えませんでしたね。元々、魔王軍に相応しくない者でしたが、死体が残っていれば、まだ利用価値はあったのですがね……それすら残さないとは蛆虫以下ですねぇ」
「それを理解した上で私は彼と契約した。それに、彼は私が求めていた働きを十分にこなしてくれた」
「おお!さすがは魔王様!あの様な使い道のないゴミ屑にも、活用法を見出していたとは!……それで、彼はどの様な使い道があったのですか?」
「勇者の初戦の相手をしてもらった。それだけだ」
「はて?それはどういう……」
異世界から召喚された勇者。
剣も魔法も忘れ去られた異世界で生きて来た勇者が、いきなり実戦で上手く戦えるはずがない。
もし、セロス以外の魔王軍の者が勇者の初戦の相手だった場合、実戦経験の浅い勇者が敗北する可能性は少なからず存在した。
だから、勇者に敵意を持たないセロスを初戦の相手にぶつけた。
初めからセロスの戦う理由を知っていた。その上で契約した。勇者の初戦の相手として相応しいと考えたから。
更には、セロスが対魔導師の戦闘に強かった事も関係している。
勇者はハイエルフの血を引いている。故に、魔法の才に長けている事は想像に容易い。
その勇者の実力を測るためにも、セロスは適任だった。お陰で、勇者から古代魔法を引き出す事が出来た。
十分な成果だ。
「しかし、何故勇者が敗北してはいけないのですか?召喚されたばかりの勇者を殺害し、その首を人間共に見せびらかせば、人間共を絶望に染め上げる事も出来ましたが」
「ザキエル。それは私の望む台本ではない。一方的な殺戮では何も生まれない」
「おお、流石は魔王様。私では到底思い付かない光景を思い浮かべているようですねぇ。やはり貴方は素晴らしい!このザキエル、感動いたしました!」
世界に抗って、覆す。
「とはいえ、見ているだけでは面白くない。我々も、舞台に上がるとしよう」
「おお!遂に私の出番ですか!滾る!滾る!五百年ぶりに人間共を殺せる!」
「まずは挨拶だ。この世界に教えてやろう、魔王が再び君臨した事を」
「ええ!是非とも!魔王様の存在を思い知らせましょう!」
全ては、我が理想の為に。




