雷の少年
雷が少年の真ん中を貫いてから、
すべてが変わったように思えた。
少年が触れるものは
すべて感電するから
誰も触れなくなってしまった。
母にも父にももう触れない。
飼い猫は逃げてゆくから、
愛しいあの人にも近寄れないから、
そして友達も失ったから。
ペンケースすら焦げてしまう。
ノートは燃えて、炭になった。
彼は学校を辞めた。
ゴロゴロと
雨雲の隙間から
聞こえてくる日は調子がいい。
彼は息子も辞めたから、
彼は家から飛び出したから、
彼はもう人とは関わらないから。
誰もいない草原に行って
ひたすら降る雨 浴びるだけになった。
草原に一本の木
大きな木の下 少年は佇む。
灰色の空だけが 少年を癒やした。
草原の木だけが 少年の友達になった。
大きな雷だけが 少年に触れた。
もう二度と人間は触れないけれど
雷なら触れる
その痛みだけが 生きてる証。
やがて大きな木の真ん中
大きな雷が貫いて
木の幹バリバリ
真っ二つになった。
焦げた匂いだけが
草原に漂う。
少年が触れてみると、
木は焦げ炭になって
この世から消滅した。
どうやら、少年がいるところに
雷は呼び寄せられるようだった。
少年はもうどこへいっても
雷と二人きり 二人ぼっち。
どんなに離れたくても
雷と二人ぼっち。
佇むところももうどこにもない。
山へも海へも行けなくなった。
ただただ雷と一緒にさ迷うだけ。
どこにもいけずに今日も少年
雷連れて 雨雲背負って
大雨に濡れて 探してる。
触れるものを 探してる。
晴れているとこ 探してる。