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私と管理人さん(奈々)

作者: 狼花

  ジャリジャリジャリ

あれ? いつもと自転車の様子が違いますね。

自転車の後輪を触ってみる、明らかに空気が入ってなくてパンクしてました。

夕飯の買い出しに行こうと思ったのですがこれは出鼻をくじかれましたね。

近所の自転車屋さんは17時までしかやっていません。

・・・ 今は、おじゃる丸がテレビであってたから18時くらいかな。 ・・・


 はぁ、しょんぼりです。

パンクを直すのにも微々たるものですがお金がかかりますし、タイヤの交換だと5千円はしますからね。

とんだ出費です。

「自転車どうかしたのかな?」

不意に女性の声が聞こえました。

声をする方を振り返ると管理人さんがマンションからこちらを見ていました。


 「ああ、確かにパンクだね」

マンションからわざわざ管理人さんが駐輪場まで気てくださり自転車を見てくれました。

「すいません。わざわざ」

私たちが住むこのマンションの管理人さんは20台くらいの若くて長身のお姉さんです。

「これくらいなら直せるよ」

「え、いいんですか」

「空いた穴にパッチを貼り付けるだけでいいと思うしね」

・・・   パッチってなんだろう?  ・・・

「どこか行く用事があるなら私のナナハン貸してもいいけど」

「すいません。バイクの免許持ってないです」

というか取れません。年齢的な意味で

「あ、そうか」

「大丈夫です。食材を買いに行くだけなので」

「なら歩いても大丈夫だね」

「はい。でも本当にいいんですか?」

「換気扇の掃除や排水溝のつまり見たいなものだし、すぐ終わるよ」

・・・   それはめんどくさい仕事なのでは?  ・・・

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 悪いと思いつつ管理人さんに自転車を任せて買い物から帰りに駐輪場に寄ると私の自転車は見事に弾力性のあるタイヤに生まれ変わっていました。

・・・   すごい、でもただでここまでしてもらうのは気が引けますね  ・・・

驚嘆きょうたんの思いとお礼をどうしたものかという悩ましい気持ちです。


 「ああ、管理人さんにあったんだ」

とりあえず家に帰って、妹の桃花に先ほどの出来事を話しました。

「はい、すごいんですよ。自転車のパンク直してもらいました」

「奈々は管理人さんのすごさをまだ知らないよ。多分、自転車のチェーンのサビ取りまでやってあると思うよ」

「え!」

・・・   そこまでは見てないです。というか管理人さんのこと詳しいですね。  ・・・

それはそうと、あの人なんでもできてかっこいい人ですね。

「それで何かお礼したいんですが桃花、何か管理人さんが喜びそうなもの知りません?」

「お礼?そんなの迷惑だよ」

「え?」

桃花なら何か好物でも知ってるんじゃないかと聞いたのですが返ってきたのは私の想像を外れた答え。


 「お茶菓子とか持っていっても管理人さん、かえって気を使わせたかなって困っちゃうから普通にありがとうってお礼を言ったげるだけがちょうどいいんだよ」

「え、でもそれだと私の気持ちが」

「だーかーら。ちゃんと誠意を込めてありがとうってお礼をいえばいいんだよ。ものよりもまず気持ちが大事なんだから」

「いいこと言いますね」

「実体験だからね」

「実体験?」

「私も前に自転車修理してもらってお礼しようと管理人さんにお母さんの来客用の高級メロン持ってったら、

『渡す側にも気持ちがあるんだろうけど、受け取る側にだって気持ちがあるということを考えないとね』って怒られた」

「え、でも。それおかしくないですか?」

高価なものだというのもあるかもしれませんが。

そういうのは普通お礼をもらって、どういたしましてで終わるものじゃないんですかね?

「うん、管理人さんの変なとこ。まぁ、管理人さんは仕事しただけにしか思っていないし

「ありがとう」って純粋なお礼が一番嬉しい人なんだよ」


   ・・・ 私のマンションの管理人さんって、できた人ですね ・・・


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] この管理人さん、いいキャラですよね〜
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