そこで僕は彼らに聞くことにした。part6
「お客様はそのお嬢さんに恋しているのですね」
「そう……なんですかね。僕、そいつのことを男だと思ってたのでそんな気持ちは切り捨てたつもりなんですけど……」
小学校で習う不完全な性教育。その一環で恋についても教えられる。
その時僕は既に偲を男だと勘違いしていた。
この気持ちは間違っているんだ。皆と同じでなければダメなんだ。なんて子どもながらに社会のルールの一旦を理解していたのだ。
―僕は、人を好きになってはいけない。
偲への気持ち以外にも多くの理由が重なり、僕はそう結論をつけ人を好きになることを止めたのだ。
「確かに……社会は異端な者を許しません。そして、そんな者を侮蔑します」
自分達と異質な者は排除する。それが社会の暗黙の了解。
誰が決めたというわけではないが皆がそれを絶対のルールと捉えてしまっている。
だから、異論を持つ者は自分の意見を主張しても自分が本当に正しいのか自問自答を繰り返し、いつの間にかそれはかき消される。
「ですがね、お客様。これは私個人の意見なのですが、人を好きになることに間違いなんてありません」
僕は余程、怖い顔でもしていたのか。
マスターはが僕の思考を察したのか柔らかい笑顔を浮かべ言葉を続ける。
「それはつまり、その人の本質を理解し信頼し更に知りたい守りたいと思う事だからです。それに、お客様は社会のしがらみに囚われながらでも勘違いしている間も尚そのお嬢さんの事を好きでいらっしゃった」
店長との会話の最中だが、宙を横目で見る。
彼は、何もかもを察していたかのように何食わぬ顔で店長を見ながらカフェオレを飲んでいた。
「お前と偲とのコンビネーションは昔から熟年夫婦並だって皆思ってるから。そこまで仲良い異性に微塵も恋愛感情がないなんておかしいだろ?」
僕の視線に気づいたのか宙言う。
僕達の事をすぐ近くで長年見てきた幼馴染が言う事だから間違いはないだろう。
「お前は頭も良いんだからもう分かってるんじゃないのか?」
そうか……僕のこの気持ちは、
「お客様のその気持ちは間違いなく本物です」
店長の言葉を聞いてやっと僕の心は晴れた気がした。
「そうなんですね……」
「たくっここまでどれだけかかってんだよ?」
宙は悪態を吐いているがその顔はとても優しく緩んでいた。
「おや、コーヒーが冷えてしまいましたね。新しくお入れします」
それからしばらく三人で時間を忘れ談笑をした。
「では、店長。相談に乗ってくれてありがとうございました」
「いえいえ、とても楽しい時間をありがとうございました」
Oh……gentleman
(Oh……gentleman)
この時、僕と宙の心が通じ合った気がした。
……とても悲しい。
店から出ると春とは言え夜にはまだ寒さが肌に刺さる。
「この店、今度は皆で来ようぜ!」
「おお、いいね」
そのまま駅に歩いて行き丁度来た電車に乗る。
「なあ、帰りスーパーに寄っていい?偲と偲の母さんが入学祝いに家で食うらしい」
「へー作ってくれるのか?」
「んなわけねえだろ。祝われるはずの僕が作るんだよ」
いつも何かがある度に偲の家族が家に飯を食いに来る。
「けんちゃんの料理はプロ並みね。隣にレストランがあって私嬉しいわ」
なんて偲を少しだけ大人にしたような童顔でいつも言われてしまう。
「あーじゃあ俺も食いに行こうかな。今日親遅いらしいし」
「なら真尋も呼ぶか。その方が種類も増やせる」
今日の事は既に分かっていたので春休みの貴重な時間全てを料理に回したのだ。
「おお、そりゃ良いな」
「ああ、姉さんもその方が喜ぶ」
それに、今日叔父さんも早く帰ってくるはずだ。
そう思った時に丁度ラ○ンの通知が来る。
叔父さんからの連絡で『今日遅くなるから飯いらない』と書いてあった。
「はあー」
「どした?また叔父さんか?」
「ああ、忙しいのは分かるけど僕が作らないとまともなもの食ってない気がしてさ」
僕は、今日買うつもりのメモを見つめる。
「酢の物でも作ってやるか……」
今日も僕は元気に主夫をしている。
面白いと思って頂ければ幸いです。
今回やっと区切りが良くなったかなと思います。
作品に少しだけ関係する雑談を一つ。
白達磨(性別不明)も昔幼馴染や同級生に幼稚園で少し経つまで性別を間違えられてました!それに気づいたのは少しませた子に告白された時です。
今でも偶に街中で間違えられてます。
あ、あと、最近書き始めたバトル物も読んで頂ければ幸いです。マジで上手く書けない。




