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そこで僕は彼らに聞くことにした。part5

「これから一年間君達の担任をする事になった清水 龍樹(しみず たつき)です。よろしく」


「同じく副担任をする後藤 剛(ごとう つよし)だ」


 清水先生は細身の眼鏡をかけた男性で二十代くらいだろう。


 後藤先生は一言で言えばゴリラのようなガタイの人だ。この人も多分二十代だろう。


 清水先生はともかく後藤先生は教師じゃなくて自衛隊の人じゃないの?


「今日はこのまま解散です。教科書などに不備があった人はこの後、俺でも後藤先生でもいいので言いに来てください」


「明日は書類の配布や委員や当番を決める。ああ、あと自己紹介の内容も考えて来ること。以上だ。解散」


 清水先生に続き後藤先生が伝達事項を付け加える。


 後藤先生の言葉を合図に皆が一斉に席を立ち動き始める。


「ねえねえ皆、ラ○ン交換しようよ!」


「お、良いね!」


「じゃあ、集まって!」


 す、凄い。自己紹介をする前からラ○ンの連絡先の交換が始まった……だと!?


「これが都会のリア充……」


「何言ってんのけんちゃん?」


「賢治がおかしいのはいつもでしょ?」


「どうせ自己紹介前にラ○ンの連絡先の交換を皆が始めたからリア充やばいって思ってるんでしょ?」


 三人が寄ってきて僕の独り言に各々反応する。


 僕は内心、偲が心を読めるのでは?と困惑している。


「いや、読んでないよ?」


「読んでるじゃないか?!」


 僕と彼女?の会話を傍で聞いていた宙と真尋が顔を見合わせお互い首を傾げる。


「じゃあ、私たちはここで別行動ね」


「賢治、また後でね!」


「んん」


 偲と真尋が教室から出て行く。


 偲が手を振ってきたので、軽く返事しつつ手を振り返す。


 何故かクラスの連中の視線が突き刺さる。


「じゃあ行くか。どこ行くよ?」


「駅の近くに喫茶店あった」


「オッケー」


 ***


「いらっしゃいませ」


 扉を開けるとチリンと心地よく鈴が鳴り、カウンターでコップを拭いていた初老の男性の店長らしき男性が笑顔で迎えてくれた。


 店内からはそれなりに年季が入っている事が伺える。どこか気品を感じる。


「お二人ですかな?」


「はい」


「では、カウンターへどうぞ」


 店長に促されカウンターの席に座る。


「注文を伺います」


 僕達は注文表を見てそれぞれ、


「コーヒーのホットをブラックで」


「カフェオレで」


 と注文する。


「かしこまりました。少々お待ちください」


 そう短く言って、店長はハンドルを回してコーヒー豆を挽き始め、直ぐに注文の品を僕ら二人の前に並べた。


「では、ごゆっくり」


 そう言って店長はまたコップを拭くのを再開する。


 僕はコーヒーを一口飲む。驚くほど美味しい。


「うへえ……そんな苦いのよく飲めるよな」


「いや、そこまで苦くないし。すごく美味しいよ?」


「ははは、口にあったようで何よりです」


 店長が手を止めることなく目を細め笑う。こういう人の事を紳士と言うんだろうな。


「で、聞きたいことってなんだ?」


「ああ、そうだった」


 僕はコーヒーをまた一口飲み、心の準備を整える。


「偲の性別ってどっち?」


 僕がそういった瞬間、宙は凄い勢いでカフェオレを吹き出した。


「おま、汚いぞ」


「お客様、こちらをお使いください」


 宙は気管にカフェオレが入ったのか大きな咳をする。その間に店長はサッと彼に布巾を差し出す。


 Oh……gentleman.


 おっと、宙の病気が少し感染してしまったようだ。危ない危ない。


「おい、けんちゃん……それ本気(マジ)で言ってんのか?」


 落ち着いたのか布巾で机を拭きながら宙が尋ねてくる。


「逆の逆に聞くが僕が今までこんな質の悪い冗談を言った事がある?」


「ないな……。そうか、これで全てに合点がいくな……」


 宙は即答し、上を向き目を閉じる。


「偲は、あいつは女だ」


「やはりそうか」


 そう呟いてコーヒーをまた口に含む。


 そうなると、僕は何のために初恋の心を切り捨てんたんだろう。


「で、どうするんだ?」


「何がだよ?」


「偲とのこれからだよ。俺の記憶が正しければ少なくとも小学校の高学年までは好きだったんだろ?」


 偲と言い、こいつと言い……。


「僕ってそんなに分かりやすいかな?」


「偲といる時は俺でも分かりやすいな」


 今度から表情とか態度とか気をつけないといけないな。


「どうするって言われてもなあ……」


「失礼ですが、お客様はそのお嬢さんの事をどうお思いなのですか?」


 僕が考え込んでいると店長が突然話に入ってきた。


 普通は不快なのにこの人の場合はそこまで気にならないな。


「他の皆と同じくらい大切な幼馴染だけど、やっぱり昔から特別な存在……ですね。一番身近な血の繋がりはないけど家族と同じくらい大切だと思っています」


 僕の言葉を聞いて店長はコップを拭くの作業を一旦止めて僕の顔を真っ直ぐに見つめてくる。


 その顔には、優しげな笑顔が浮かんでいた。


「お客様、人はそれを''愛おしい''と言うんです。お客様はそのお嬢さんに恋しているんですね……」



面白いと思って頂ければ幸いです。評価や感想お待ちしております。


今回登場した喫茶店の店長は白達磨が通いつめている飲食店の店長さんを参考にしております。

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