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そこで僕は彼らに聞くことにした。part4

「てか、けんちゃんは何でそんなに特別クラス嫌がるんだよ?皆と一緒で嬉しいだろ?」


 現在、僕達は一年一組の教室に向かっている。


「いてて、そんなに怒んなくてもいいじゃん……」


「あれは本気の顔だったわね」


 偲が涙目で頭をさすりながらこちらを見てくる。その隣の真尋は神妙な面持ちで頷いている。


「知らん」


 誰だって勝手に書類の内容を変えられてたら怒るだろ。まあ、今回は確認しなかった僕も少し悪いが。


「で、どうなんだよ?」


 宙が痺れを切らし少し強めに聞いてくる。


 仕方ない。僕は正直に答えることにした。


「僕ってそこそこ勉強出来るだろ?」


「そこそこ……?かなりじゃなくて?」


「そこは良いんだよ。で、普通クラスだったら勉強しなくてもそこそこの成績をキープ出来て楽して遊べるかな……と思って」


 僕が理由を話終わると彼はこめかみを抑え、ため息を吐く。


 そして、偲の方へと顔を向ける。


「偲、よくこのバカの企みを阻止してくれた!」


 グッと親指を立てて見せた。


 彼女?もふふんと自慢げに薄い胸を張る。


「賢治のことだからそんな事を考えていると思って書き換えておいたんだよ!ドヤっ!」


 やはりか。彼女?は昔から僕の思考のほとんどを読んでくる。とても怖い。


「何であんたはスペック高いのに楽しようのするのよ?けど、安心しなさい賢治。偲がいる限りあんたの計画は未然に阻止させるから」


 真尋が意地汚げな笑みを浮かべこちらを見る。その隣の偲は「諦めな」と言うように頷く。


「僕の青春が……」


「青春って具体的何がしたいんだよ?やっと俺と運動する気になったか?」


「は?んなわけねえだろ。ほら、友達と遊んだり……彼女作ったり……」


 恥ずかしすぎて最後の方、ちゃんと伝わっているだろうか?


 宙は暫く黙って考える素振りを見せる。


「友達はまあ、俺達がいるから良いとして、彼女なあ〜」


「彼女ねえ〜」


 宙と真尋が顔を見合わせニヤニヤしだす。どういう事だ?


「…………」


 偲は何故か無言でプルプルと震えている。


 そこで、ようやく彼らの反応の意味を理解した。そのため、顔がカアアッと熱くなるのを感じる。


 どうにかして話題を変えなければ……そう言えば僕は偲について宙達に聞こうと思っていたんだ。


「その事で思い出したんだけどさ僕、宙に聞きたい事あるんだけど帰りどっかで話さね?」


「ん?別にいいけど」


 僕の真面目な態度から何かを察してくれたのか宙は表情を引き締め了承してくれた。


 良し、これで目下の問題は解決出来る。


「じゃあ、私は偲とスイーツでも食べに行こうかしら」


「スイーツ!!良いね!」


 真尋も察してくれたらしく、気を利かせてくれたようだ。


 ***


「歓迎の言葉、生徒会長柴田 流美」


「はい!」


 教頭らしい初老の教師に名前を呼ばれ、流美は返事をし、スタスタと僕達新入生の前に出て来る。


 その返事は会場に響き渡り、彼女の動き一つ一つが会場のざわめきを制した。


 我が姉ながら中々の威厳を感じさせる。普段家でもあの状態で居れないのだろうか?


「新入生の皆さん御入学、おめでとうございます。我々在校生は……」


 彼女の透き通った声によるスピーチはこの会場内の人々を魅力しているのではないだろうか?彼女はそう錯覚する程美しいスピーチをしているのだ。


「流美さん、やっぱり美人だよなー」


「同じ親の元に産まれたたとか信じられねえわ」


 出席番号で並んで座っているので僕と宙はいつもの事ながら隣同士だ。


「いや、お前も眼鏡除けたら結構似てるぞ?あと、髪切れば」


「そうかな?まあ、そろそろ偲に髪切って貰おうと思ってた頃なんだ」


 自分の前髪をひとつまみし引っ張ると結構な長さだった。


「そんなにお前ら仲良いのに、どうして『以上で歓迎の言葉とさせていただきます』」


 宙の言葉に重なるように流美のスピーチが終わり、大きな拍手が響き渡った。そのせいで、最後の方が聞き取れなかった。


「続いて、新入生挨拶、新入生代表夢川 偲」


「はい」


 美少女の次も美少女のため、会場(主に男子)が湧き上がる。


「おおー」


「可愛い」


「俺、入学して良かった……」


 良し……今、喋った奴の気配は覚えた。


 そんな事を考えていると、宙に突然しばかれた。


「痛え。何するんだよ?」


「殺気が出てたぞ?そんなに好きなら何で告白とかしないんだよ?」


「色々あるんだよ。それを含めての今日の寄り道だ」


「……そうか」


 宙と話しているうちに偲も僕達の前に出てきた。


「我々新入生のためにこの様な場を用意して頂き……」


 偲の声は流美に比べると小さく、心を落ち着けてくれるような声だ。


「我々新入生は今日から西部高校の生徒としての……」


 スピーチは続いていき、偲の方を見るとふと目が合った。


 その瞬間、彼女?は微笑を浮かべ、下の方で小さく手を振ってきた。


 それは嬉しいのだが、それと同じくらい恥ずかしく目を逸らして軽く頷くので精一杯だった。


「ヒューお熱いねー」


 この時だけは、宙の茶化しでそこまで腹が立たなかった。


「ふ〜ん。なるほどねえ」


 そして、宙はそれ以上何も言わなかった。


 僕は、良い幼馴染を持ったものだ。








面白いと思っていただければ幸いです。

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