そこで僕は彼らに聞くことにした。part3
僕は、先程の一件以降、ずっと宙と真尋にニヤニヤされからかわれている。
こいつら、どうしてやろうか。なんて考えているうちに目的の駅に着いた。その駅から学校までほとんど距離はなく、特に会話もなく学校に到着した。
***
「おかしい…何が起こっていると言うのだ……」
僕は、何度も自分の目を擦る。目の前の現実をどうしても受け入れられないからだ。いや、訂正する。受け入れたくないからだ。
「おお!四人共同じクラスじゃん!」
宙がそう言った瞬間、僕は目の前のクラス表が現実なのだと受け入れざるおえなくなった。
ここ西部高校は色々と特殊なのだ。
まず、一年には二つの特別クラスと言われるものが存在する。中学時代に部活動・勉学・学校生活で優秀な成績を残し、クラス分けテストで高得点を採った者のみが集められるクラスだ。
更に、高校での成績や得意教科で文系、理系の普通クラスと特別クラスに振り分けられるのだ。あと、スポーツに専念したい生徒等が振り分けられるスポーツ科なんてものも存在する。
で、僕は偲、宙、真尋達とそのクラスに振り分けられていた。
……おかしい。僕は特別クラスの希望調査でしっかり希望しないと記入したはずだ。なんなら何度も見直した。だから、安心して全力でテストを解いたのだ。
まさか―、
「偲……貴様ァ!」
そう叫びながら勢いよく彼女?の方を振り向けば、真顔で、
「あれ、言ってなかったけ?」
と何も悪びれる様子もなく言い放ったのだ。
「でも、どうやって?僕の部屋の棚にちゃんとしまっておいたはずなのに」
「ああ、そのことね。賢治は几帳面で昔から一定の種類ごとに物を片付けるし、本当に思春期の男子かってくらい部屋が綺麗だから直ぐに見つかったよ?」
僕が現実から目を逸らすためにその疑問を考えることにしたが、その答えは当事者から直ぐに語られてしまった。
「そんな勝手な……」
―そんな事許される訳がない。
そう続ける前に偲が口を開く。
「勝手じゃないよ?ちゃんと流美ちゃんからも許可とったよ」
それを聞いた時、「面白そうだからオッケー」と満面の笑みでゴーサインを出している流美の姿が脳裏を過ぎった。
「で、でも、僕の意思が……」
「それも大丈夫。ほら、思い出しなよ書類提出する日の朝」
***
それは、まだ件の書類をちょうど提出する日の朝。
「おじゃましまーす」
朝ご飯の支度をいつも通りしていると、朝からどこかに行っていた流美と偲が一緒に家に入ってきたのだ。
「いらっしゃい。朝飯食ってく?おじさんとおばさん今日早出だろ?」
「何でそれを知ってるの?怖」
「いや、昨日おばさんに聞いたんだよ。あと、お前の方がなんだかんだで怖いと思うよ?……量は?」
「ちょっと多め」
という会話をしながら彼女?は 自然な動きで僕の部屋に入っていった。
普段から小説貸せだのパソコン使わせろだのと僕が返事する前に入っていくというのが当たり前だったので、その日も僕は別に何とも思わず茶碗にご飯をよそっていたのだ。
「賢治ー。今日提出する書類ちょっと間違えてるから訂正しとくねー。」
「ああ、よろしく。印鑑は」
「机の引き出しの二段目ね」
何で知ってんだよと思いつつ、そんな事が日常茶飯事なので僕の感覚は既に麻痺しており、気にせずお椀に味噌汁を注いだ。
「あんた達の会話っていつも熟年夫婦かってくらい短いよね」
「姉さんは変なこと言ってないで早く座れよ。手ちゃんと洗えよ」
「はーい」
ついでに流美も軽くあしらった。
そして、三人で食卓を囲み偲が書類をいじってから何の確認もすることなくそれを提出したのだった。
***
「あの時か……。ちゃんと確認しとけば良かった」
「まあ、もう遅いから。諦めて学園生活を楽しもうではないか!」
偲は、そう言いながらグッと親指を力強く立てて僕の顔の前に突き出す。彼女?の顔は勝利したと言わんばかりの自慢げな笑みを浮かべていた。
そんな偲の顔を見ていると今までの怒りを通り越して何とも言えない感情になる。
それを素直に伝えるため、彼女?の頭を掴み……ありったけの力を込めた。
「アダダダダダ!!!」
彼女?は非常に小顔なため手に十分収まってしまう。
僕は、今抱いている感情が怒りとか呆れとかそんなものではなく……殺意だと確信した。
「これ、マジでやばい!入ってる!ダメな所に指入ってるから!」
僕の腕を掴み彼女?は絶叫しながらじたばたしていた。
「ねえ、宙」
「何だ真尋?」
「私どこからツッコめば良いかな?」
宙と真尋は話の展開に付いていけず空を眺めている。
「そうだな。偲がけんちゃんの部屋の収納を知ってる所からかな?」
「……それ最初からじゃん」
二人の間に暫く沈黙が続いた。
「そろそろ止めるか」
「そうね」
かなり遅れました。学校とか色々大変だったんです。
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