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カルテ02
朝の申し送りは夜勤からの引き継ぎだけで特に変わったことはなかった。私が勤務するのは手の施しようがない患者様が入院している緩和病棟。入院患者様全員が朝を迎え少し安堵。
小さく気合いを入れて立ち上がると、ナースステーションを出た。
押して歩くワゴンには回診に必要な、体温計と血圧計、手袋に聴診器。それから処方されているモルヒネ。
看護学生の頃に勉強していた教科書に載っていたモルヒネ。一生関わることはないと思っていた薬剤。終末期医療に携わるようになってからは、毎日モルヒネを当たり前に取り扱っている。
モルヒネでしか押さえられない痛みと闘う患者様を毎日看る日常。目前に死が迫っているなんて、考えられない穏やかさがここにはある。穏やかさの下に、逆らえないことがあることを知った。