表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

日常の文学シリーズ

「幻の名店」グルメレポート!

日常の文学シリーズ⑩(なろうラジオ大賞 投稿作品)

「今日は幻の名店として、テレビやユーチューバーの間で大人気の○○ラーメンさんに参りました!」

 

 男が見ている画面の中では、大食いがウリの女性ユーチューバーが挨拶している。チャンネル登録数は10万人を超えている。そこそこ有名らしい。店内には厨房とカウンターがあり、長居しづらそうな丸椅子がいくつかおいてある。

「今日は私の撮影のために、ちょっと早めに店を開けていただいてます!なので今は私の貸し切りです(笑)いつも長蛇の列ができてる名店なので、レアな光景ですね~」

 画面の女性は愛想よく笑う。

「それではさっそく!おすすめのラーメンをお願いします!」

 しばらくすると、ラーメンが出てきた。

「おいしそうですね!早速いただきます!」

 画面の女性は麺をすすって、その味を表現する。

「おいしい!麺はちょっと固めでコシがあります!スープに浮かぶ脂身はしょっぱめで、濃いめのラーメンが好きな人にはたまらないと思います!!」

 その後も彼女はレポートをつづけた。レポートは適格で、男はその食べっぷりにお腹いっぱいになった。彼女は礼儀も正しく、食べ方もきれいだった。

 そして食べ終わると

「ごちそうさまでした!おいしかったです!それでは、チャンネル登録と高評価をお願いします♡」と言って動画は終わった。男はこの動画が気に入り、チャンネル登録と高評価をした。


 それから、オススメ動画や関連動画に彼女の食レポの動画が上がってきた。他の食レポを行うユーチューバーの動画も見るようになった。どのユーチューバーも「幻の名店」についてのレポートを行っていた。それぞれのコメント欄にも「行ってきました!おいしかった!」「まさに幻の名店!」などと書き込みがなされていた。批判するコメントは一つも見つからなかった。


 男のスマホに届き続ける沢山の「幻の名店」への称賛を見て、男はその店のラーメンが、自分で足を運んで確かめるまでもなく、うまいということを信じて疑わなくなった。


 動画内で紹介されているその店の住所がデタラメなことも、好意的なコメントを打っているのが専門業者であることも、真実を告げるコメントは全部削除されていることにも、男は気づかなかった。

 

 男は死ぬまで、この「幻の名店」がこの世に存在しないことに気づかないだろう。でもそれはどうでもいいことだった。

節目の10本目です。今後もご贔屓に!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 思わぬ結末に驚きました。面白かったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ