↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仮想遊戯  作者: 菊華紫苑
魔女異聞 河梁之吟
81/89

証言Ⅲ メレク

 アイン七家族が一家ヴィアナルスに仕える寸鉄の家に生まれましたメレク、この件について証言いたします。

 ボク達が初めてカリエラと遭ったのは、彼女が5歳の時でした。彼女がアンモナ家の裏切り者の孫であることは、彼女たち一家がアンモナの名を冠すると分かってすぐに広まりましたが、その頃のボク達は、アンモナがどうとか、ヴィアナルスがどうとか、あまり関係ありませんでした。ただ、気の毒な子だという大人たちと、裏切りの者の家族だという大人たちは、分かれていた様に思います。

 カリエラはあの頃は結構ボク達と馴染んでいたと思います。ボク、マルタ、マルク、そしてカリエラで、いつでも村の外に遊びに行って、野生動物を狩る競争をしたりもしました。カリエラは大体三番か最下位で、あまり運動神経は良くなかったのですが、何よりも技術が凄かった。寸鉄―――飛び道具を投げつける術を伝えるボクよりも、弾の命中率は高かった。眼も良く、的中率も索敵率も高かった。ただ、追跡するのは下手だったので、獲物は少なかったのです。

 今でこそ魔女として憎まれ、殺人者と怨まれていますが、カリエラは決して引っ込み思案でも何でもなかった。父親と母親はどうだったか分かりませんが、少なくともカリエラは商店街にいれば、店主と話しこんで様々な料理を教えてもらい、老店主におまけを貰い、そんな意味では、寧ろ世渡り上手だったのではないでしょうか。大人好きされる、というのでしょうか。ただ、子供達の間で、ヴィアナルス家に勝るカリスマを発揮することはありません。それが妬みになっていたのか、それは今はあずかり知らない事ですが、当時は全く考えていませんでした。

 ただ、不思議なことはありました。

 引っ越してきた当初から、カリエラは一人ではありませんでした。ボク達が10歳になった頃でしょうか、その頃から商店街に、よく一人で買い物に来ているのを見ましたし、誰もが言っていました。マルタによく話しかけて、何か教えを乞うていることが増えていき、4人のものの秘密基地は、段々マルタとカリエラが独占する様になりました。

 しかしその頃になると、マルタは留学をするために勉強で家から離れられない時期になりました。


 ―――カリエラの弁護人からの問い。

 「その留学は、マルタッタ嬢が自ら望んだものですか。それともヴィアナルス家の帝国主義の先駆けでしょうか」。


 分かりません。ただ、マルタは本当に頭が良かったのは事実です。彼女が狩りをする時に何が一番怖かったかと言えば、トラップによって彼女の知らない所で勝手に獲物がとれて、数を数える時に大逆転が起こる事です。


 ―――同人からの問い。

 「その頃から、カリエラ嬢はおかしくなったと、貴方方の洗脳動画では紹介されていますが、貴方はどう思いますか」


 あの動画に、我が一家は関係していないので、それについては何も言えません。

 ただ、前後関係でどうだったかと考えると、それはそれで、因果関係があったと思います。

 元々カリエラは、同年代の間ではボク達にしか打ち解けていなかった。何がきっかけだったのかは分からないけど、いつの頃からか何かに怯えるようになって、狩り競争の方法も、だんだん恐ろしくなっていった。狩りで獲った獲物は、傷を治して野性に帰すか、家に持って帰って食べるかするのが習わしでしたが、カリエラは動物の頭や喉を撃つようになり、確実に殺して、家に持ち帰っていました。ボク達はその殺伐とした姿が嫌で、狩り競争にカリエラを入れなくなりました。彼女がいると、無駄に血腥いし、何より、貧乏くさくて嫌だった。


 ―――同人からの問い。

 「何が貧乏くさかったのですか」。


 (沈黙60秒)。

 貧乏くさいです。ジビエばかり狙って、商店街ではセール時間にしかいないようになって、親しくなったとはいえ店主たちに、余り物を強請る姿が、凄く惨めでみっともなくて、ボク達は嫌悪していました。

 ああ、そうだ、この頃です。

 この頃から、ボク達の親も、皆アンモナ家に関わるなと言うようになりました。ボク達も、それに抵抗は感じませんでした。かんしゃくを起こすようになってて、目付きも険しくて、何か、敵を意図的に見つけて、殺人の動機を探しているような―――。


 ―――裁判長の介入。

 「証言者は事実に基づき、個人の名誉を棄損せず、事実を述べなさい」。


 事実です!

 だってそうとも思わなければ、カリエラがマルタを殺す理由がない! それくらいに2人は仲が良かったんです! だから、村で通り魔が出た時も、カリエラがやったと誰もが思ったし、カリエラだって否定しなかった! 家からは変な雄叫びが聞こえて、毎日怒鳴り声が聞こえてくる! あの家は魔術で悪魔を呼んでいるという噂だってありました!

 ある時、村の女の子が、顔に大きな傷を作りました。そのきっかけは分かりません。でもあの女が彼女に馬乗りになって、頭を殴っていたのを、ボク達は止めました。あのバーチャルリアリティに記録されていたことは事実なのです。おばさんは凄く怒って、責任を取れと、一家で家に行きましたが、カリエラ本人すら出て来ませんでした。取り込み中ですとでも言わんばかりに、家の中から相変わらず気味の悪い声が聞こえて、脅かして帰らせようとしたんです。

 だから村長は、カリエラの一家に貸していた家から追い出して、郊外の物置小屋を改築して、そこに住まわせました。そこはボク達は話にだけ聞いていた、未踏の地で、山の向こうにあったそうです。


 ―――カリエラの弁護士からの問い。

「それは、十八年革命にて、ペラッカ一行が逃げ込んだ家の事ですか」。


 さあ…。ボクはその時、中央にいたので、分かりません。ただ、マルクの死体があった所は違います。

 ともかく、追い出したことで、マルタも無事に留学に行けて、ボク達もスポーツを楽しめる安穏とした日々が戻ってきました。マルタが留学している間の一年間は、ボク達はカリエラのかんしゃくや物乞いに怯えることのない、平和な一年でした。

 なのに、あの恩知らずの売女め!


 ―――再び裁判長の介入。

 「証人、事実と異なる発言は控えなさい。客観的事実に基づいて証言できないのなら、そこまでで区切りなさい」。


 …私が自信を持って語れるのはここまでです。

 以上で証言を終わります。また、以降の証言を拒否します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。