EPISODE43 ぞくちょうのへや
不気味な静けさの中、中々眠れないでいると、カリエラが話しかけてきた。
「ペラ、俺、いつか言ったよな。お前には必ず話すって」
ゼブルビューブの帰りの事を言われているのだと察知した。丁度眠れなかったので、カリエラのベッドに潜り込む。カリエラは幼子にするように、ペラッカの髪を玩んだ。
「但し、まだ他の人間には言うな。サンにもだ」
「サンにも?」
「今から話すことは、全部俺とお前だけの秘密」
メヴァーエルが聞いたら発狂物だろう。…色々な意味で。
「バーバ、いるだろ。ハホヤー部隊長」
「ああ、凄いよね。ハーヤーさんより年上そうなのに、まだまだ現役」
「当たり前ぇだ。あの人、俺の婆さんだもん」
………………。は?
「あの人、俺の母方の婆さん。祖母」
「………。は?」
「血の繋がった婆ちゃん。だからバーバって呼んでんだぜ」
「な、なんで!?」
ガバリと起き上がると、頭を押さえつけられた。
「俺の母親はナタスの出身なんだよ。前にも、『親がナタスの子』って言っただろ」
「あれ、方便だと思ってた。…あれ? ってことは、カフジエルさんはイトコ?」
「ああ、そうだ。会ったのはほんの数回だけど、連絡はこっそりな。…父方は違うんだけどな。オフクロはアイン生まれのアイン育ちだ」
「じゃあ、サンと同じ?」
「サンの家庭環境なんて知らねえよ。あいつ、俺以上に家の事話さねえんだぜ」
「じゃあカリエラ…。北アインとか行ったことない?」
「………。は?」
今度はカリエラが睨むような驚いたような顔をしてこちらを見る。ペラッカは装備の裏から、大切にしまった、あの白い写真を見せた。カリエラはそれを見て、どうしたんだ、と眼で言って来た。
「パラベラム会でカリエラの部屋を使わせてもらってて…。それでたまたまこの写真見つけて…。それで、おかしいなって思って…」
「…………。それ、資料だ」
「資料?」
「中央に映ってる子供二人、そりゃ現ヴィアナルス会の幹部の子供時代の姿。…それ以外は全員死んだ」
「何で」
「………北に行けば分かる」
それきり、カリエラは背を向け、何も話してはくれなかった。どうにか強引に眠りに付いたが、昼間見た死体の山が脳裏から離れなかった。
眠りが浅かったからだろうか、何か微かな音がして、目が覚めた。ひゅーん、という風を切るような音。何だろうと思って目を擦ったその瞬間、物凄い音が耳を劈き、肌をビリビリと痺れさせ、心臓を打った。カリエラが飛び起き、さっと前掛けと杖を装備する。ペラッカも大急ぎで戦闘態勢に入った。遠くで何度も何度も爆発と崩落、それに悲鳴が聞こえ、三半規管が狂う。
「か、カリエラ! どこ行くの!?」
「バーバとサンが一緒にいる! 助けに行くぞ! 集中砲火は三時間でキメねえと気が狂っちまう!」
カリエラは臆することなく扉を蹴り破り、落下してくる煉瓦をモーニングスターで払いながらナタスの中心地まで走った。ペラッカも弩とベレッタを手に後を追いかける。目の前のカリエラがどんどん距離を離して行っても、待ってと声をかけることが出来なかった。そんなことをして呼吸を乱す暇は無かった。
前に進めば進むほど、落下した瓦礫が増えて道を塞ぐ。カリエラはひょいひょいと超えていくが、ペラッカは背の低さからよじ登って漸く超えられる。待って待ってと言ったが、カリエラは聞こえていないのか無視しているのか、どんどん先へ走って行った。




