EPISODE37 シルファーのはかば
何を言われるのかとビクビクしていたが、カリエラは沢山の棒が並ぶ不思議な場所に連れてきた。棒が立っているところは、雑草もなく、良く手入れされた花が飾られている。
「カリエラ、ここ、何?」
「墓場だ」
「ハカバ?」
「死んだ人が眠る場所。…ここがメタトリーナさんの『墓』」
「ハカ? 死んだ人? アイン人の?」
カリエラは少し考えてから、真っ直ぐにペラッカを見つめた。
「ペラ、『その時』が来た時、その天使見習いはどうなるか知ってるか?」
「え? うんとねえ…。教会の人が迎えに来て、教会で儀式をして、そのまま身体と一緒に天使様になるの。それで、守護天使見習いとして、残った天使見習いの家族を守るの」
「はい模範解答」
何を言いたいのか分からない。まあ座れ、と言われたので、カリエラに習ってメタトリーナの墓の前に座る。暫くカリエラは黙っていて、寂しい風の泣き啜る声だけが響いていた。
「人間は、皆最終的にこうなるんだ」
「こうって? ハカの下に焼いて埋められちゃうの?」
「そう」
「でもそれ、ダアト人には関係なくない?」
「関係あるぞ。教会でも同じことしてる」
「え!? なんでなんでー? そんなことしたら天使様になる為の身体がなくなっちゃうじゃん!」
「だっていらねえもん」
何を言っているのか暫く分からなかった。
「教会で行う儀式、パラベラム会で見なかったんだな」
「そんな暇なんてないよ…。訓練に追われてそんな暇なかった」
「その割に、ヨナの部屋で茶ァしてただろ」
「げ、何でそれを」
「やっぱりか」
「ハッタリ? 何でわかったの?」
「お前の考えることくらい察しが付く」
そう言って、カリエラはこつんと額に手を当てた。暫く足元の地面をいじっていたが、小石を投げては取り、投げては取り、少し遊んでから、それを放って言った。
「あの煙な、儀式の煙なんだよ」
「お香でも焚くの? それとも蝋燭?」
「いや、死体を焼くの」
「シタイって何? 天使様になると古い身体は無くなっちゃうの?」
「メタトリーナさんみたいに心臓が動かなくなったり、頭が壊れて動かなくなった、人『だった』ものが死体。ダアトの天使見習いたちも死体になるんだぜ」
「嘘だい。だってダアト人は天使見習いだから、儀式をやれば天使様になれるもん」
「そ。その為の儀式が『死体』になること」
「???」
言っている意味がよく分からない。カリエラは構わず続けた。
「『その時』が来て迎えに行った人が、本当に『その時』かどうか、しっかり審査する。『その時』でなければ教会で治すなりなんなりして、家族の許に帰す。『その時』だと分かったら、眠らせて安楽死させる」
「アンラクシ?」
「苦しくない死に方。眠ったら二度と目覚めない」
「そうすると天使様になるの?」
「その後身体を焼く。メタトリーナさんは骨を遺してお骨をここに埋めたけどな。パラベラム会では何日も高温で焼き続けて、灰になるまで焼き潰す」
「その灰を使って、天使様になるの?」
「その灰は捨てる」
「捨てちゃうの!?」
「当たり前だろ。『天使様』になるのに、不要なゴミなんだから」
「だって…。だって…。…あれ?」
その時、ペラッカは自分の中に何かモヤモヤとした矛盾がある事に気が付いた。ただ、それが何なのかは分からない。だがカリエラはそんな疑問だらけのペラッカを見て何か安堵したらしく、よしよしと頭を撫でた。
「聖女だから話すんだ。サンには相談してもいいけど、レラーとメヴィには話すな。特にメヴィには絶対駄目だ」
「何で」
「時っていうのは何でも決まってるもんさ。俺が、時が来たと思ったらちゃんと話すから」
じゃ、帰るか、とカリエラは立ち上がったが、ペラッカは暫く墓場に残ることにした。このモヤモヤが解けると思ったのだが、いつまでたってもモヤモヤはモヤモヤのままだったので、諦めて帰った。




