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仮想遊戯  作者: 菊華紫苑
第二章 白砂青松
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EPISODE21 ちんもくのしま

 は? ペラッカは笑顔のまま凍りつく。残りの二人は顔を見合わせて、今何を言われたのかと此方に近づいてきた。そこでサンダルフォナはもう一度言ってあげることにした。

「ここは流刑島。有害植物の楽園。人呼んで沈黙の島だよ」

「猛毒植物…? それだけ?」

「うん。猛獣はいないよ」

 よかったあ、と二人は安心しているが、ペラッカは安心できない。この話の展開、もし相手がカリエラなら何か仕組んでいるはずだ。

 そうとも、何もないなら、何故サンダルフォナとカリエラは服を交換しているのか。

「ねえ、何で態々服変えたの?」

「いや、今までの方がむしろおかしかったんだからね? あの服カリエラのだし」

「っていうか今までの展開だと、カリエラは絶対何か隠してるじゃん!」

「あはは、バレた?」

 あっけらかんと言うサンダルフォナ。特に邪気がある様には見えない。それが一番恐ろしいところだろう。事の重大さに気付いたレラーが悲鳴を上げる。

「なんか良く分かんないけど、また危険な目にあうってこと!?」

「あー、うん。まあ一発や二発は覚悟しといたほうがいいと思うよ」

「一発!? 何が一発!?」

「いや、だって、ここ流刑島だし」

 しょうがないよ、とサンダルフォナはやはり笑う。肝が据わっているのか重要性が分かっていないのか、やはり軽々しい。

「カリエラ、何て所に連れてきたのよー!」

「あはは、聞こえないよメヴィ。それよりこの先に集落があるから行くよ。お話もしないといけないしね」

「………ねえサン、まさかそのお話役、あたしじゃないよね? いくらなんでもあたしじゃないよね?」

「は? 何のための聖女な訳?」

 これ以上ないくらいに、ペラッカは悲鳴を上げた。


 とにかく悲しんでいても仕方がない。サンダルフォナが行くと言って聞かないし、何よりあの小さなボートで島を脱出するには、あまりにも潮の力が強く、島に戻されてしまったのだ。まあ責任は取ると言うサンダルフォナはカリエラよりは頼りないが、謎の物体を背負う姿は確かに頼もしい。

 ジャングルには蛇や狐、狸がおり、時折驚いて襲ってくる。確かに猛獣はいなかったが、獰猛な獣はいたらしい。カリエラの銃撃がない分、木の枝でペラッカも応戦せねばならなかった。ベタベタと纏わりつく植物や、時折綺麗な花が咲いているジャングルは実にバラエティに富んでいるが、楽しむ暇はない。なぜならそれらは皆毒があるからである。長ズボンではないレラーやメヴァーエルは、早速虫や葉に触ってかぶれていた。

「かゆいよ~」

「だから私、今日だけでもレギンスとかはきなさいって言ったのに」

「だって似会わないもん!」

「生足も似会ってないわよ」

 こうして見ると、髪の毛を少し切ったカリエラの様だ。毒の草を物ともせず、ずいずい進んで、しかし戦いになれば自分は身を引いて、自分の役割を良く理解している。

「物凄い量の毒草だね…」

「やっぱり花屋の娘は分かる?」

 人が住んでいるなんて信じられない位だ。ペラッカは頷く。

 と、サンダルフォナが足を止めた。目の前の橋が崩れている。川は大きく、ジャンプでは越せそうにない。仕方がない。サンダルフォナとペラッカがどうすべきか考えていると、あることに気がついた。

「ねえサン、この橋って自然に壊れたのかな?」

「は?」

「ほら」

 レラーとメヴァーエルはもう話す気にもなれないらしく、座り込んでいる。ペラッカが指示したのは、橋の足元。言われてみれば、朽ちて壊れたと言うよりも、叩き折れたと言った方がよさそうだ。何か重い物でも運ぼうとしたのか、或いは壊されたか。

「なんか嫌な予感するんだけど」

「気のせい気のせい。橋の耐久性がなくなって事故防止に落としたのかもよ」

「そ、そうかな?」

「そうだよ。それより良い事思い付いちゃった。ちょっと皆、離れて」

 そう言って、サンダルフォナは背負っていた荷物を下ろした。そしてカバーを外す。中からは、丸みを帯びた剣のようなものが出てきた。鎖が絡み、何と言うか、見るからに凶暴である。

 …と、いうより、寧ろこれは。

「…ねえ、もしかしてそれって」

「あ、本物を見たことはないよね。私の愛機」

 ぐっ、とサンダルフォナが両手で剣を握りしめる。ギャイーーンと凄まじい音がして、驚いて三人はお互いに飛びついた。サンダルフォナが川べりの木の近くに行き、刃を当てると、両手で抱えられる程太い幹があっさりと切られる。更に力を緩めると、剣は大人しくなった。おりゃ、幹を殴る。文字通り皮一枚で立っていた木は、ぼっきりと折れて、対岸までの橋を作った。

「…そんなにチェーンソーって珍しい?」

「………ナンデモナイデス」

 単純にチェーンソーという凶暴なイメージと、穏やかで優しいサンダルフォナとのイメージが合わなかっただけだが、死んでも言えないと思った。

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