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少年秘密警察の日常  作者: 家宇治克
アリス狂乱茶会事件
13/109

13話 捜査開始

 県警から捜査資料を預かり署に戻る。

 昨晩喧嘩騒ぎになった刑事課事務室ではお菊が捜査本部を設置して待ち構えていた。


「おかえり。報告は簡潔に頼みんした」

「帽子屋でした。以上」

「ごめん。やっぱ詳しく言いなんし」


 被害者が未だ分からないため、県警との会話や薫の行動など、あった事をありのままに話していると、薫が上機嫌で「ただいまぁ〜」と帰って来た。

「おや、一緒じゃなかったのかい?」

「あぁ、はい······」

 神奈川の警察署からの帰り際、薫は「ちょっと寄り道して帰るわ」とどこかへ行ってしまった。その方向が病院のある方向だったことは覚えている。

 ······五十嵐警部、病院に運ばれたらしいって聞いたが。······いや、まさかな。


「やる事のついでに五十嵐にトドメ刺した」

 やはりな──


 満面の笑みで親指を立てる薫に、お菊は「······そう」と弱々しく返す。深くため息をつく隼の肩にそっと手を置き、小声で励ますお菊。

「トドメといっても、きっと軽いものでありんしょう。何とかなるかもしれんせんし···」


 ──隼は知っている。


「何をしんした?」とお菊が尋ねる。

 薫のキラキラと輝く顔が眩しい。

「人権なくてもそれなりの権限はあるんだぜーって、お前らより偉いんだぞって言った」

 お菊は安心したように微笑む。


「でも嫌味言われたから『今日からお前の席ねぇからぁ!!』って叫びながら火だるま小籠包ねじ込んできた!」


 この上ない笑顔にお菊の顔が引きつり固まった。隼は先程よりも深くため息をつく。


 ───薫が軽くで済ますはずがないんだよな。


 お菊とお詫びや見舞いの品の相談をしていると薫は「全治二ヶ月ってウケるわ〜(笑)」と言ったのを聞き、お菊が頭を抱える。

 どうも謝罪のレベルが自分では低いらしく、煙管をふかして「後で報告させて貰いんす」とやや諦めたように煙を吐いた。


「で? 結局やることって何だったんだ?」


 気を取り直し、薫の近くに寄ると辞書並みに厚い封筒を渡された。中身はクリップで分けられた二つの紙束。片方はやや薄い。

むくろが持ってきたデータの被害者の現場資料と写真、写真が多くてなぁ。んでお前が貰い忘れた今日の被害者の写真や個人情報」

「······悪いな」

 一枚の紙に隙間なく並ぶ写真のコピー。

 裏には名前と場所の記述がびっしり書いてある。確かに多い。

 ······見るの面倒だなぁ。



「ああああああああ!!」



 薫が叫んだ。

 薄い方の紙を握り、そのまま潰してしまいそうな程の力を手に込めている。

 茶を淹れていたお菊も珍しげな表情で振り向いた。隼も薫の見る紙を覗く。

 ──理由がわかった。


「「そっぷるたんだっっ!」」


 お菊が盛大に茶を吹き出す。

 昨日出会った腹立たしい店長の姿がそこにあったのだ。

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