1話 夕暮れ時の部屋
──良い夕焼けだ。
空は紅く染まり、雲までもが色づく。······絶景だ。
白かった部屋も、今は夕焼けで真紅の世界へと変化している。
風谷隼は、部屋にある唯一の窓から沈みゆく日を眺めていた。そんな絶景から目を離し、徐に自分を確認する。
青い髪、赤い球状のイヤリングとそれに付いている葉のモチーフの飾り。
ブレザーと警察の制服を混ぜたような服、ポケットに入っている携帯電話から財布、あらゆるものを確認した。
……何も取られていない。
深いため息をついた。
「どうしてこんなことに···」
開口早々にやらかした発言。
落ち込む隼の耳に入ったのは少年の明るい声だった。
「仕方ねぇだろ~。諦めろよ」
炎のように赤い髪、鋭い目つき、風谷と同じ服を着崩してガムを噛む。
火里薫は部屋の奥でニヤッと笑っていた。
「···お前、楽しそうだな」
「いやぁ~、ちょっとな。しっかしどうしたもんかな」
「薫が油断するからだろ」
「隼こそ、『油断大敵だ』って言ってたくせに、油断してたじゃん」
反論の術を失い、再び窓の外に目を向ける。
今の状況は大変で、···いや、
大変というほど大変ではないのだが······
──監禁されている。