クリスマスは終わり
今日はクリスマスなので書いてみました。
一応、タイトル回収です。
「じゃあ、これで終わりお疲れ。クリスマスだからってはしゃぐなよ。解散。」
「お疲れ様ですー。」
部活も終わり、私はため息をつく。
このあとの予定は特にない、でも家に帰りたくない。クリスマスなんてつまらない。こんなイベントなくていいのに。
「野依ちゃん、暇?」
冬なのにかなり汗をかきながら、朝日は声をかけてきた。
「朝日先輩?」
「なら、俺らとファミレス行こうぜ!お前の分も出してやるから。」
真はジャージ姿で、スポーツドリンクのボトルを声をかける。
「え、せっかく恋人になってから初めてのクリスマスなのに2人きりじゃなくていいんですか?」
「いいんだよ。お前、どうせ家に帰りたくないだろ?ほら、暗い顔すんなよ。」
どうやら、私の気持ちをわかってくれたらしい。
「じゃあ、全部真の奢りで。いやー、ごめんね?彼女の分も払わせちゃって。」
「何言ってるんだよ、お前は自腹だ。」
「えー、ひどーい。彼女可愛くないの?」
「うるせーよ、お前部長だろ?ほら、この段ボール持てよ。もう1つあるからさ。」
「それはマネージャーの仕事でしょ、酷いわー。部長様に逆らうなんて。」
二人の会話を聞きながら自然に笑顔になる。
そうか、もう落ち込むことなんてないのか。
「あ、野依じゃん。先輩たちとクリスマス過ごすの?いいなー。」
手を振りながら、こっちへ近づいてくる。
「なっちゃんには彼氏いるでしょ、社会人の。」
「そう、でも今日仕事だから夜まで会えないんだ。」
「お?ファミレス一緒に行く?」
「これも俺の奢りかよ……。」
「今朝手作りマフラーあげたでしょ、ほら働け働け。」
「ったくよー、ほらさっさと行こうぜ。混むだろ?」
今日は楽しい、みんなに会える。
今日は嬉しい、みんなと一緒。
ーー次の瞬間、爆風が巻き起こる。
死体、死体、死体、死体死体死体死体死体死体死体死体死体。
叫び声と、
「あ?」
なっちゃんが、死んでた。頭はなかった。
朝日先輩の右手が落ちてた。
真先輩は、生きてた。左足、なかったけど。
いや、左足から先はどろどろの液体になっていた。
「真先輩?」
「……お前は、大丈夫か。」
「足、その。」
「わかってる、痛みがないんだよ。液体になったせいかな。」
「……あの、周りの人。」
「ああ、あの植物みたいな奴に液体にされて食われてるな。」
「なんで、そんなに冷静なんですか。」
「さあな、もうすぐ死ぬからじゃないのか?」
「朝日先輩は……。」
「死んでないと思いたい、さっき爆風に飛ばされたんだ。アイツは生きてる。そう、信じてるよ。」
「あ、あ、私。私。」
「落ち着けよ、ほら。深呼吸。吸ってー」
私は深く息を吸う。
「吐いてー、ほら?落ち着けよ。な?」
「……。」
「お前だけ無傷だし、植物みたいな奴に液体をかけられても体が溶けなかったな。」
「……。」
「なぜかわからん。でも、ラッキーだ。」
「……。」
「だから、逃げろ。朝日を見つけたら伝えてくれ。『マフラー編むの下手くそかよ』って。アイツは多分ずっと泣いてると思うから。」
「……。」
「ほら、俺みたいになるな。急げ、ほら。ーー走れ!」
私は泣きながら、立ち上がった。
「朝日のこと、よろしくな。ーーどうか、お前らは幸せになってほしいよ。」
私は鞄を持つと走り出した。涙が止まらない。
何が起こったかわからない、死にたくない、先輩がいない。植物みたいのは何?殺さないで、逃げなきゃ。
色々な感情が一緒になる。
走れ、走れ、走れ、走れ、走れ、走れ。
今は、走らなきゃ。
私はそのまま走り続けた。
クリスマスは世界の終わりだったのだ。
私は絶望しながら、走り続けた。
そう、これは。マウエッタと会う、数時間前の話。