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一億植物社会  作者: りー
3/8

クリスマスは終わり

今日はクリスマスなので書いてみました。

一応、タイトル回収です。

「じゃあ、これで終わりお疲れ。クリスマスだからってはしゃぐなよ。解散。」

「お疲れ様ですー。」

部活も終わり、私はため息をつく。

このあとの予定は特にない、でも家に帰りたくない。クリスマスなんてつまらない。こんなイベントなくていいのに。

「野依ちゃん、暇?」

冬なのにかなり汗をかきながら、朝日は声をかけてきた。

「朝日先輩?」

「なら、俺らとファミレス行こうぜ!お前の分も出してやるから。」

真はジャージ姿で、スポーツドリンクのボトルを声をかける。

「え、せっかく恋人になってから初めてのクリスマスなのに2人きりじゃなくていいんですか?」

「いいんだよ。お前、どうせ家に帰りたくないだろ?ほら、暗い顔すんなよ。」

どうやら、私の気持ちをわかってくれたらしい。

「じゃあ、全部真の奢りで。いやー、ごめんね?彼女の分も払わせちゃって。」

「何言ってるんだよ、お前は自腹だ。」

「えー、ひどーい。彼女可愛くないの?」

「うるせーよ、お前部長だろ?ほら、この段ボール持てよ。もう1つあるからさ。」

「それはマネージャーの仕事でしょ、酷いわー。部長様に逆らうなんて。」

二人の会話を聞きながら自然に笑顔になる。

そうか、もう落ち込むことなんてないのか。

「あ、野依じゃん。先輩たちとクリスマス過ごすの?いいなー。」

手を振りながら、こっちへ近づいてくる。

「なっちゃんには彼氏いるでしょ、社会人の。」

「そう、でも今日仕事だから夜まで会えないんだ。」

「お?ファミレス一緒に行く?」

「これも俺の奢りかよ……。」

「今朝手作りマフラーあげたでしょ、ほら働け働け。」

「ったくよー、ほらさっさと行こうぜ。混むだろ?」

今日は楽しい、みんなに会える。

今日は嬉しい、みんなと一緒。


ーー次の瞬間、爆風が巻き起こる。








死体、死体、死体、死体死体死体死体死体死体死体死体死体。

叫び声と、

「あ?」

なっちゃんが、死んでた。頭はなかった。

朝日先輩の右手が落ちてた。

真先輩は、生きてた。左足、なかったけど。

いや、左足から先はどろどろの液体になっていた。

「真先輩?」

「……お前は、大丈夫か。」

「足、その。」

「わかってる、痛みがないんだよ。液体になったせいかな。」

「……あの、周りの人。」

「ああ、あの植物みたいな奴に液体にされて食われてるな。」

「なんで、そんなに冷静なんですか。」

「さあな、もうすぐ死ぬからじゃないのか?」

「朝日先輩は……。」

「死んでないと思いたい、さっき爆風に飛ばされたんだ。アイツは生きてる。そう、信じてるよ。」

「あ、あ、私。私。」

「落ち着けよ、ほら。深呼吸。吸ってー」

私は深く息を吸う。

「吐いてー、ほら?落ち着けよ。な?」

「……。」

「お前だけ無傷だし、植物みたいな奴に液体をかけられても体が溶けなかったな。」

「……。」

「なぜかわからん。でも、ラッキーだ。」

「……。」

「だから、逃げろ。朝日を見つけたら伝えてくれ。『マフラー編むの下手くそかよ』って。アイツは多分ずっと泣いてると思うから。」

「……。」

「ほら、俺みたいになるな。急げ、ほら。ーー走れ!」

私は泣きながら、立ち上がった。

「朝日のこと、よろしくな。ーーどうか、お前らは幸せになってほしいよ。」

私は鞄を持つと走り出した。涙が止まらない。

何が起こったかわからない、死にたくない、先輩がいない。植物みたいのは何?殺さないで、逃げなきゃ。

色々な感情が一緒になる。

走れ、走れ、走れ、走れ、走れ、走れ。


今は、走らなきゃ。



私はそのまま走り続けた。



クリスマスは世界の終わりだったのだ。

私は絶望しながら、走り続けた。



そう、これは。マウエッタと会う、数時間前の話。




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