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志村恭介編 ニ尾城
「何?何で、こんな事が?せ、先生・これは・・」
品川が驚いた。高村が視線を逸らした。
「先輩・・一体どうなっています?このからくりってのは・・。まず、この原石はただの水晶だったとしか思えませんよ。幾ら私が専門外でも」
低い声で志村が言う。どうしてここまで何重にも手の込んだ事をするのだと言いたいのである。
「・・やはり、お前には隠し通せなかったか・・その通り、それは贋物だよ」
「どうして、こんなに手の込んだ事をするのです?先輩はもう一旅館のご主人でしょう?この真世さんが真実だとして、我々を欺く事に繋がりませんよね」
「済まん!お前を欺くつもりは無かったんだ」
高村が両手をついた。
「そのネックレスが本物だって事は私も認めますよ。だから訳を」
「・・・ここではもうお前達は何も探るな。真世ちゃんの存在を認めるなら、それで、今は充分じゃないか、これ以上やるとお前達の身にも危険が降りかかる」




