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志村恭介編 古城
「判りました。助教授が戻り次第伝えておきます。どうぞ、ご退室下さい」
研究室を出る前に、岸上が、
「ワン!ワン!」
頭に血が昇って、品川はドアに向かって何かを投げようとしたが、寸での所で思い止まった。岸上の笑い声が廊下に響いていた。
午後のサイレンが鳴る少し前に、研究室に戻って来た志村は、教授会の資料を持ち出すと、再び走り出て行った。
志村チームと岸上チームは共に、次期教授の道がある上に、古代史の中の日本の位置付けと言った非常に近い研究の上に、何かにつけて志村が古代日本を過大評価するのに対して、大陸文化の影響を受けた日本の位置付けとあらゆる面で視点が逆で、それは片方が○と言えば、もう片方は△と言う類の、論の為に闘わす論のようなものだった。品川は常に視点がぶれない一貫した志村を尊敬していた。