志村恭介編 古城
「どうやら、やらざるを得ない状況のようですね。紅水晶は丁度3個。では、互いが決して口外せぬと言う誓いで、一個ずつ分けましょう」
こうして紅水晶は3等分された。普通の紅水晶は、色々な鉱物が混入しているので赤い色だが、この紅水晶は地球上には存在しない全く異質の高純度の鉱物の結晶だと言う。その高度はダイヤモンドの数十倍。歴史の中で永久に閉ざされて扉を開く為に3人は行動を開始したのだ。
訪れた旅館の前で、志村と品川が立ち止まった。
「へぇーーっ、こんな立派な旅館だなんて思わなかったよ」
最近建て直したばかりらしく、旅館の名を『都屋新館』とあった。薄汚れた格好である、志村と品川は旅館の前で躊躇していた。その時、
「よお!」
背後からの声に二人は振り返った。
「先輩・・!」
都屋旅館の法被を着て、口髭を蓄えた、高村の姿があった。
「先輩、お久しぶりです」
「話は中で。さあ入れよ」
中に入ると、豪華な木の彫り物と、大きな壺を左右に据えて、一際美しい女将が三つ指をついて出迎えてくれた。尚更二人は服装を恥じた、まさかこれ程立派な旅館とは一言も脇坂は言わなかったのだから。志村も、当時の旅館の面影が記憶には無かった。




