志村恭介編 古城
「我々は学者ですよ。そんな一般常識的な答えを聞きたい訳じゃない。その用途はもっと別にある筈と見ているからですよ」
「朝っぱらから煩い奴等よ。まあ、飯が出来たんなら、食いながら話そう」
品川の作ったソフトボール大の握り飯と、地の味噌で作った味噌汁に、
「何じゃこりゃあ。こら!こんな握り飯があるかい。それに何じゃ、この辛い味噌汁は。年寄りを殺すつもりかい!全く・・ぶつぶつ」
怒りながら食べる脇坂に、品川もぷりぷりしながらも、少し罰の悪そうな顔をしていた。志村とて料理等全く出来ぬ。
「その滑石はのう、硯に使われとるのよ。勿論装飾品としてな」
「ああ・・そう言われて見れば、柔らかいので、加工は容易いでしょうね。すると、西方城で見つけた訳ですか、この滑石を」
「ち・・志村、お前に関ったら適わん。重要だ等と言うんじゃ無かったわ」
腹立しげに脇坂が言うのを、品川がにやにやしながら聞いて居た。普段は人の話等ほぅ・・とか、はぁ・・とか人事のように無関心に聞く志村だったが、事確信に触れると、たたみかけるように聞いて来る。T大学一の論客にして、若いながら超レベルな学者である事は品川が良く知っている。




