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志村恭介編 古城
「いやあ・・ちょっとな」
少し脇坂の様子がおかしい。
「博士、それより昨日は聞けなかったんですが、滑石は何に使うんですか?」
志村の視点の先がそこにある。脇坂が大事と言ったその理由とは・・
「ああ・・滑石はのう、製紙の原料で、アート紙に使うんじゃよ」
「ほぅ・・そうでしたか。それなら大量に使いますよね・・それと他にはどうですか?」
「うむ・・この辺りじゃ温石と呼んで居るが、実際のその石とは違う、滑石が正しい。ごいしとも呼んで居る。まあ、鉄鋼所等の線引きとか、縁日で売っているおもちゃ代わりかのう・・最近ではそんな物は見かけんが」
「へえ・・他にはもう無いのですか?」
品川も横から聞く。興味ある話だからだ。
「他には、他にはと。お前達はどうしてそんなに聞きたがる。うっとおしい奴等じゃのう」
顔を歪める脇坂に、志村は明確に言葉を返した。




