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志村恭介編 古城
「同行して来た訳では無いのです。ある書物が脇坂博士より送られて来て、ようやく半年掛かりでその解読を終えました。そして、この地がその中の1つで、ある事に関連していました。博士の同行は今日の事で、事前に予定に入っていた訳ではありません。ただ、我々とすれば、こちらの土地勘であるとか、博士の真意等も伺う事になり、歓迎しては居りますが」
「・・貴方の言葉には嘘は無いようだ。わしのこの年まで色んな方に接して来ました。澄んだ静かな眼の方だ。貴方を信用します」
志村は山田村長に手を差し出した。山田もその手を握り返した。話は、そして明け方近くまで及んだのであった。志村が寝床に着いたのは朝の4時の事であった。
それから3~4時間後には、大きな声で志村達は起こされていた。
「こら、もう起きんかい。わしゃあ、腹が減ったぞ。飯にせい」
品川が、ぶつぶつ言いながら支度を始めた。志村は大きな欠伸をしながら外へ出た。外は非常に寒かった。脇坂はその間そわそわとして落ち着かない様子だった。志村が家の中に戻ると、
「どうしたんです?博士。何かお忘れ物ですか?」




