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志村恭介編 古城
山田村長のノックはどうやら、日中では人目を憚るある物を深夜に届けに来たようであったが・・包みを持っていたからだ。
「実は・・これを脇坂先生にお返しするつもりで持って来ました」
その差し出された包みの中に10センチ四方の桐箱が現れて、その中身を見て志村は驚いた。
「赤い・・燃えるように赤い水晶だ」
そこには、3本の7から8センチの水晶が入っていた。
「・・この水晶は、実は脇坂先生がこの地で集めたものです」
「ほう・・でも、村長。何故貴方がこれを?」
「盗んだんです。夜中に脇坂先生の資料室に忍び込み」
改めて志村は、山田村長の顔を見た。山田村長の顔に曇りは感じられなかった。




