43/1226
志村恭介編 古城
「成る程、理由は分かりました。・・すると、大学まで山田村長を面倒見たのは脇坂博士ですね?」
「ふ・・その通り。お前にはもう後の語りは必要無いと見える。わしは動きとうても、もう以前のようには無理じゃ。これからの研究は若いお前が継げ」
脇坂はそれだけ言うと、寝息を立てた。志村は考じていた。脇坂は老いた・・この地に死に場所を求めて帰って来たのかと・・。品川も思った、これ程の学者が後押しをする以上、ここにはきっと確かなものが在る――と。
その夜もかなり更けて、木戸をノックする音に志村は飛び起きた。連日の山歩きで熟睡していた志村達であるが、志村自身は妙に今回の脇坂の行動に、ある不可解も感じていた。水晶に見向きもしなかった点と、滑石の話も聞けず仕舞いだ。それにわざわざ脇坂がこの宿泊所に同行して来た点だ。自分が追われるように出た村なのに・・だ。




