志村恭介編 古城
「未だわしは40歳前の事じゃ。その時教えたのが、ここの村長をやっとる、山田修作じゃ。今でこそあんなじゃが、当時は手に負えないような暴れん坊でのう。村も活気溢れていた頃で、1万人近い者が住んどった。わしは、趣味で暇を見つけては、岩石・鉱物を拾うとったから、岩石先生と呼ばれて、標本作りを楽しんで居った。わしは晩年にはこの村に骨を埋めてもええな・・そんな事を考えて居った。話が長うなるので、前後を省略するが、わしはあの修作の母親・・香津子さんに惚れとった。あ奴はあんなぶ男じゃが、母親は東京からこの村へ嫁いで来た色白の美人でなあ」
脇坂の身の上話などどうでも良い品川は、ぶすっとして聞いていた。
「わしはな、子供の頃より、夜中に素っ裸になって散策する習慣がある」
「はあ?」
突然何を言い出すのかと、品川がすっとんきょうな声を上げた。常識的で、生真面目この上の無い男にとって、脇坂の言動は品川の規格を遥かに超えている脇坂は続けた。。
「・・そりゃあ、変な習慣じゃ。わしとてその自覚はある。わしの父親は軍人で厳格な男だった。子供の精神と体を鍛える為と言って、365日深夜の素っ裸の散策は日課だった」
「へえーー・・真冬の凍った夜にもですか」




